2009年8月8日

TWSでもエコ。大巻伸嗣が描くトーキョーの「絶・景」

よくみれば小舟の舳先には小さな鳥が街の方を向き、
いまにも飛び立ちそうに止まっています。


先週になってしまいましたが、8月1日からトーキョーワンダーサイト渋谷で『絶・景 真空のゆらぎ/大巻伸嗣』展が開催されています。

まず驚かされるのは、会場に海と砂浜が再現された作品「言葉の無い予言」なんとも夏らしく、涼しげに浜辺を再現して、浜辺を汚すゴミや漂流物の問題でも提起しようというのでしょうか? 薄暗い会場には妙に黒い砂が敷かれ、実際に水を引き入れた浜辺になっています。さらにその小さな小さな海には小舟が浮かび、その向こうにはどこかで見た事のあるような、街がぼんやり写し出されています。




この涼しげな作品はその理由を知らなければ、この展覧会を見に来た意味がありません。実はこの浜辺の砂は「スラグ」と呼ばれるものが敷き詰められています。スラグはゴミをガス化溶融炉(ゴミ処理施設の一部)で燃やして出た燃えカスなのです。ここにあるスラグは東京都のゴミ処理施設で日々生み出されているもので、これ以上、処理のしようがない最終処分物です。スラグにはほとんど使用用途がなく、多くがアスファルトなどに混ぜて東京の地面になっています。つまり、いまあなたが立っている、その場にスラグがすでにあるというわけです。

大巻さんは、スラグに埋め尽くされた場所が「未来」であり、向こう側に見える薄ぼんやりした懐かしい街がいま現在いる「過去」なのだと説明しています。未来から過去を見させられているわけで、それはまるで彼岸から現世を見させられているようにも感じます。しかし、未来と過去は隔絶されたわけではありません。スラグでできた小舟に止まる鳥がふたつの岸をつないでくれています。「まだ、間に合う」のでは、と一縷の希望を感じぜずにはいられません。

内覧会ではもうひとつの展示である「真空のゆらぎ スカイライン」のパフォーマンスが行なわれました。二階の会場に大量に敷き詰められたスラグを小さな穴から落として、一階にもうひとつのスカイライン(地平線)を作り出そうというものです。ところがこのスラグは大変微小なため、会場内はもうもうたる粉塵に塗れることになります。

「真空のゆらぎ スカイライン」のパフォーマンスの様子。
参加者はマスク着用という異様な雰囲気の中、行なわれました。

大巻さんによれば、展覧会の期間中に、東京都のエコバス(バイオディーゼル燃料を使ったハイブリッドの都バス)を使って、東京都のゴミ処理施設でガス化溶融炉を見学しようという、エコツアーの企画も進めているということです。実現にはいろいろとハードルがありそうですが、実現したらぜひ、参加したいと思います。

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