2012年2月22日

『メ芸』開幕!文化庁メディア芸術祭受賞作品展レポート+大賞受賞作品についての雑感

文化庁メディア芸術祭は国立新美術館をメイン会場に
六本木の5会場で開催中。会期は3月4日まで

2月22日、『平成23年度[第15回]文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』国立新美術館(東京・六本木)をメイン会場に開幕しました。開幕前日の21日にはプレスおよび関係者内覧会が行われ、隣接する東京ミッドタウンでは贈呈式が行われ、いずれも参加させていただきました。大賞作品の紹介を中心に作品展の様子をレポートします。




【アート部門
アート部門の大賞は山本良浩氏の『Que voz deio(醜い声)』が受賞しました。

『Que voz feio(醜い声)』山本良浩
アート部門 大賞

映像作品の同作品は、別々の場所にいる双子の女性が2画面に同時に映し出され、鑑賞者は映像、音声、字幕を同時に受け取りながら作品を鑑賞する事になります。映像を見続けていくと、双子の二人が同じ事を語っていながらも、微妙な違いがある事に気付きます。似ていながらも微妙に異なる二人の話は、よく理解しようとして片方に集中すると、もう一方の情報が余計に不確かになってしまいます。こうして双子の告白にある差異に気づく事で、記憶というものが過去の認識を共有しているわけではないのでは? という事に行き当たりました。静かな映像の中で知的な思索に入り込める良作と感じました。

いいね!とは思いつつも、昨年の大賞作品である「Cycloïd-E」が大変大掛かりな作品であったのとは対照的に本作品の地味なイメージには正直?と。これまでのアート部門の傾向からみても、なぜこれが? という疑問は拭えません。これまでの傾向を離れる事で、世界的にも認知されつつあるだろう「メ芸」の傾向について、鑑賞者である僕はもちろん、アーティストたちも混乱するのではないでしょうか? 「そんな単純な事ではない」と審査員のみなさんには一喝されそうですが。

コンペティションでありがちな、審査員がかわると受賞する作品傾向がかわってしまう、という事に一因があったとしたら、15年継続してきた意味はなんなのだろう? と思ってしまいます。同時にここにきて、原点に帰るかのような映像作品の受賞に、メディアアートってなんなの? という疑問にぶち当たってしまいました。


【エンターテインメント部門】
エンターテインメント部門の大賞は大八木翼氏らによる『SPACE BALOON PROJECT』が受賞しました。


『SPACE BALOON PROJECT』
大八木翼 / 馬場鑑平 / 野添剛士 / John POWELL
エンターテインメント部門 大賞

本作品は「この星の想いをつなぐ」をテーマに、スマートフォン「GALAXY SII」の発売を記念して企画されたプロジェクトで、当時、ネット上で大きな話題になりました。GALAXY SIIを特殊なバルーンに搭載して、米国ネバダ州から上空3,000mへとフライトさせ、成層圏まで上がったバルーン内のGALAXY SIIにTwitterなどで募集したメッセージが表示される模様が衛星通信を経由してUSTREAM配信され、視聴者数は38万人を超えました。

NTTドコモとサムスンの製品プロモーションという広告の形でありながらも、どこか作り手の見える、手作り感いっぱいの同作品には、当時、僕も大変好意的に感じていました。ですが、今回の展示はいかにもIT系の展示会ブースのよう。当時を追体験できるような見せ方であればよかったのですが、これはホントに残念……。


【アニメーション部門】
アニメーション部門の大賞は新房昭之監督の『魔法少女まどか☆マギカ』が受賞しました。


『魔法少女まどか☆マギカ』新房昭之(監督)
アニメーション部門 大賞
作品展示では等身大?のまどかフィギュアや設定画などの資料が。
ここでたまたま同作品の受賞に納得がいっていない大御所のアニメ監督と居合わせました(笑)

本作品についてはあまり多くを語って墓穴を掘るのは避けたいのですが……。

僕がこの作品を高く評価しているポイントは、何と言っても「常識を覆すのはクリエイターの大きな役割のひとつ」ではないか、という点です。魔法少女という確立されたジャンルを、原作の存在しないオリジナルアニメという手法と、“週刊の番組”というテレビのあり方を巧みに操る事で、視聴者の心に大きく揺さぶりをかけていく様は、(個人的には同感はできなかったものの)作り手に対して「やるぅ」とひっそりエールを送っていました。

スタート当初は「いまいち」の声もあったものの、最終的には「僕と契約して、○○になってよ!」とか「マミる」という言葉まで流行るほどに。僕はこれでも旧いタイプの人間なので、ここはやっぱり山村浩二監督の「マイブリッジの糸」が順当だろう、と思っていましたが、“まどマギ”が成し遂げた事を考えれば、これもまたありか? とも。いずれにせよ、間違いなく“まどマギ”は、新しいアニメの潮流を生み出すきっかけとなるだろうと感じています。

アニメのひな形を発明したのが、ニッポンであれば、それを破壊し、変革するのも日本のアニメ、という事なのかな、と。


会場のひとつであるメルセデスベンツ・ベンツ・コネクションには
まどか☆マギカの公式痛車?となったスマートがお目見え

今回のメディア芸術祭は、例年会場となっている国立新美術館、東京ミッドタウンに加え、六本木のさまざまな施設でも展開されています。その中のひとつである、メルセデス・ベンツ・コネクションにおいて、まどか☆マギカの公式痛車?が展示されていました。

映画化も控えており、今後の展開が楽しみです。楽しみと言えば、贈呈式に新房監督が登壇するのを楽しみにしていたのですが、残念ながら登壇したのはアニメ制作を担当したシャフトの代表でした。


【マンガ部門】
マンガ部門の大賞は岩岡ヒサエ氏の『土星マンション』が受賞しました。

『土星マンション』岩岡ヒサエ
マンガ部門 大賞

本作品は、地球全土が自然保護区となり地上に住めなくなった時代に、上空35,000メートルの軌道上にあたかも“土星の輪っか”のごとく作られたコロニーに住まう主人公・ミツの成長物語です。中学卒業と同時に、亡き父の職業だった“コロニーの窓拭き”という仕事を継いだミツが、師匠や近所の人々、依頼主といった周囲の人々との出会いから、仕事への誇りや自信を得ていくといういつの時代にも通用する、いや、こういう時代だからこそ、余計に大事に思えるストーリーです。

「土星マンション」の作品展示には主人公・ミツがコロニーの窓から顔をのぞかせるユニークなセットが
作品展示には作者の岩岡氏手作りのぬいぐるみが。
このところイ・ブルさんや清川あさみさんのように手芸的な要素を持った女性アーティスト、
クリエイターによく出会います。個人的に、総じて“チクチク系”と呼んでいます(笑)

僕は残念ながら本作品を12月の発表の時点まで存在すら知りませんでした。発表後、すぐに手に入れて読んでみて、すぐに気に入ってしまいました。SFであるにもかかわらず、まるでいまの、すぐ隣にいる人々を描いているかのような親近感をおぼえました。ありきたりの感想だけど、女性らしい優しい視点に、これは男性には描けないなぁ、と。


【功労賞】
功労賞は広島国際アニメーションフェスティバルを指揮してきた木下小夜子氏が受賞しました。

功労賞を受賞した木下小夜子氏

木下氏は、いまやアヌシー、オタワ、ザグレブと並ぶ世界4大アニメフェスへと成長した『広島国際アニメーションフェスティバル』を企画、実現し、引っ張ってきたまさに世界のアニメ界の功労者と言えるでしょう。受賞の感想を求められた木下氏は、「後継者は育っています。ないのはお金です。ぜひお願いします」と贈賞に登壇していた平野博文文部科学大臣をチラッと見ての一言には、重みと茶目っ気があってとても印象的でした。


贈呈式には平野文部科学大臣、浜野保樹運営委員長を中心に各賞受賞者、審査員が出席しました

贈呈式の最後には各賞の受賞者、審査委員のみなさんでフォトセッションがあり、この後、祝賀会が行われました。会場では大変久しぶりに富野由悠季監督とゆっくりお話する機会があり、ここでは明かせないお話をうかがいました。そのうちお話できる機会もくるのではないかなぁ、と思うので、その時をお楽しみに。


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