2013年12月19日

架空だけどどこにでもありそうな理不尽。『神奈川芸術大学映像学科研究室』が1月公開に

神奈川芸術大学映像学科研究室』。これだとアートネタのように見えますが、実は映画のタイトルなんです。

(いかにもありそうな)架空の美術大学、神奈川芸術大学の映像学科で起こる映像機材窃盗事件を軸に、それを隠蔽しようとする教授たちや、それに振り回される大学助手たち、見た目ばかりが大人で中身は子どもの学生たち、といった事件にかかわる人間模様を通じて “組織の理不尽”を描くシニカルなコメディ。


『神奈川芸術大学映像学科研究室』は2014年1月25日より新宿武蔵野館でレイトショー公開です

教授たちの雑用や学生の不始末の尻拭いというやりがいを感じない職場や、そうした状況に甘んじている中途半端な自分に疑問を持ち、友人からの起業の誘いとの間で揺れる大学非常勤助手・奥田。奥田は、深夜、学内の機材倉庫から映像機材を持ち出そうとする学生たちを見つけるが、学生たちは奥田に見つかった瞬間、高価な映像機材を落としてしまう。学科長の森田らはこのところ不祥事が続く映像学科の “来年度の予算” をなんとしても削られないため、この事件の隠蔽を決める。奥田は自分たちの保身しか考えていない教授たち、問題ばかり起こして反省の色を示さない学生たち、映像学科の不始末の怒りの矛先を奥田にばかり向ける庶務課課長の杉本といった人たちの板挟みになり、追い込まれてしまう。ついに奥田の我慢は限度を超えてしまうが……。





本作品は脚本・監督を務めた坂下雄一郎さんが大阪芸術大学で助手(副手)を務めていた時の経験を元に、東京藝術大学大学院映像研究科第7期修了制作として制作したもので、本年2013年7月に開催された「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2013(IDCF)」において長編部門審査員特別賞を受賞した作品です。さらにSKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ(埼玉県川口市)が推進する「SKIPシティDシネマプロジェクト」の第4弾作品に選出され、2014年1月25日に新宿武蔵野館(東京)で劇場公開が決定しています。

IDCFは毎回、必ず取材しているので、本来ならこの作品もすでに拝見しているハズだったのですが、会期中の上映日は別件が重なり見ることができず、マスコミ試写がはじまっても70分という比較的短い上映時間にも関わらず、前後になにもないのにピンポイントで別件が入ったりで、試写室に向かう途中で急な用事ができていけなかったり、とこの映画には縁がないのかな、と思っていたところ、本日ようやく最終試写で拝見できました。




大学の運営側なんて、大学に学生として通った事があったても、勤めた事がなければまったくどんなところかわからないものですが、ここまで普通の企業と同じような煩わしい事、理不尽な事が起きる場所だったとは。ちょっと考えればわかるものだとは思いますが、あらためてこうして映像にされるとちょっとしたカルチャーショックを感じます。

SKIPシティDシネマプロジェクトとは、SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザが若手映像クリエイター育成のために行っている上映支援事業で、これまで「未来の記録」(監督:岸建太朗)、「DON`T STOP!」(監督:小橋賢児)、「チチを撮りに」(監督:中野量太)と3本が公開されてきています。毎回、小品ながら、おおっ!と思わせる作品ばかりで、本作もとっても期待していました。小橋賢児さんの「DON`T STOP!」は初監督ながら見応えのあるロード・ドキュメント・ムービーになっていたし、中野量太監督の「チチを撮りに」も逞しく生きる女3人家族の描き方にとっても好感が持てました。


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