2013年12月11日

美術館体験を大きく変える? クリーブランド美術館の試み

巨大な美術館に行くと、膨大な量の作品群に圧倒され、なにがなんだかわからないけど、とにかくスゴかったという感想しか生まれず、折角の知的体験の場に足を運びながら、棒のようになった足を引きずって帰路についている自分に気づく、なんてことありませんか? 自分が知らなかった新しい世界の窓となりえる美術館や博物館の本来の魅力に気づかずに帰ってしまうような事があったら、こんな勿体ない事はないと思います。


そんな美術館体験を大きく変える試みがアメリカ合衆国オハイオ州にあるクリーブランド美術館ではじまっているようです。


クリーブランド美術館は1913年に開館(公式には1916年)した100年の歴史を持つ美術館で、収蔵点数は70,000点、展示室数は70を超える、全米屈指の規模と質を誇る美術館です。とりわけ日本美術コレクションは古代から江戸、近代にまでおよび、ボストン美術館やメトロポリタン美術館といった著名な日本美術コレクションに匹敵する名コレクションです。同館では2006年に大規模なリノベーションを行い、続いて2008年より増築を行っており、2013年1月にインタラクティブ機能を備えた「ギャラリーワン」がオープンしました。







このギャラリーワンではデジタル・インタラクティブを活用したさまざまなデバイスが来館者の新しい美術館体験をサポートしています。展示室に設置されたイーゼルを模した大型ディスプレイはユニークです。収蔵されている彫刻などの立体作品の形にあわせ、来館者が同じポーズを取る事ができ、その写真をソーシャルメディアにリンクさせる事もできるようです。

圧巻は12メートルもある「コレクション・ウォール」です。巨大なマルチタッチスクリーンに常設コレクションから3,500点以上の作品画像がタイル状に表示され、そこにタッチすると直感的に作品が検索できます。来館者は数多くの作品の中から気になった作品を選んで、自分だけのアートツアーを作ることができます。さらに持参したiPadや美術館で貸し出しているiPadをウォールにドッキングさせる事で、選択した作品やアートツアーのデータを持ち運ぶ事ができます。これに同館が独自に開発したiPadアプリケーション「ARTLENS」を使う事で、来館者は館内の常設コレクションの実物がどこにあるかわかったり、作品にiPadをかざしてAR機能により作品データを作品とともに閲覧できます。

2010年に行われた第13回文化庁メディア芸術祭でコンセプトを提案させていただき、実際に会期中に運用されたiPhoneアプリケーション「JMAF navi」(現在は削除)は、会場内での来館者の位置にあわせてその場にある作品を紹介するというものでしたが、最終的にはまさにこういう事がやりたかったのでした。


iPadアプリケーション「ARTLENS」


インタラクティブ技術による新しい美術館体験はどんなアートとの新しい出会いをもたらすのでしょうか? ぜひ一度、クリーブランド美術館に行って体験してみたいものです。ところで、オハイオに行く前に、前述したクリーブランド美術館の日本美術の名コレクションが日本でも楽しめる展覧会がやってきます。


来春、2014年1月15日(水)より東京国立博物館(東京・上野)において開催される『クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美』です。クリーブランド美術館では、ギャラリーワンに続き、2013年6月に新たに日本ギャラリーをオープンしています。本展はこれを記念して開催されるもので、同館のコレクションより、平安から明治にいたる選りすぐりの日本絵画約40点に、西洋絵画などの優品を加えた総数約50点を紹介します。

本展は日本美術独特の4つのテーマで構成されており、第一章「神・仏・人」は仏画や肖像画などの人体表現、第二章「花鳥風月」は咲き誇る花々や鳥たちをあらわした花鳥画、第三章「山水」は名所や胸中の理想の風景を描いた山水画、そして第四章「物語世界」は日本の絵画が「人」と「自然」をどのように表現してきたかをたどります。


『雷神図屏風』「伊年」印 江戸時代・17世紀 クリーブランド美術館蔵
Photography © The Cleveland Museum of Art
Andrew R. and Martha Holden Jennings Fund 2004.86

『龍虎図屛風』雪村周継筆 室町時代・16世紀 クリーブランド美術館蔵
Photography © The Cleveland Museum of Art
Purchase from the J. H. Wade Fund 1959.136.1-2

『蔦の細道図屛風』深江蘆舟筆 江戸時代・18世紀 クリーブランド美術館蔵
Photography © The Cleveland Museum of Art
John L. Severance Fund 1954.12

日本にクリーブランド美術館から日本美術コレクションがやってくるのにあわせ、クリーブランド美術館では2014年2月16日〜5月11日に東京国立博物館所蔵の日本美術の名品による特別展「伝統の再生-日本近代美術」が開催されるそうです。


クリーブランド美術館展ー名画でたどる日本の美

会期:2014年1月15日(水)〜 2月23日(日)
開館時間:午前9時30分〜午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
会場:東京国立博物館
休館日:月曜日
主催:東京国立博物館、クリーブランド美術館、
NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
協賛:日本写真印刷
協力:全日本空輸

「クリーブランド美術館展」観覧料
一般:1,000円、大学生:800円、高校生:600円
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
コメントを投稿