2014年5月26日

百貨店でワクワク。ISETAN-TAN-TANが話題

最近、百貨店にいきましたか? 近所のイオンやイトーヨーカドーの事じゃありませんよ。そう、三越とか阪急とか、あの百貨店です。元百貨店員だから肩を持つわけじゃありませんが、このところ、百貨店、がんばってます、っていうかおもしろくなっているな、と感じてます。




もちろん品揃えに関しては、近所の巨大ショッピングモールの方が取り扱い点数が多いだろうし、原宿や青山のセレクトショップの方が専門性が高くて気の利いたものが多いだろうと思います。でも、それらにないものが百貨店にはあります。

僕がこどもの頃は家族揃って百貨店に行くのが一大イベントでした。百貨店に行く時には、僕と兄は一張羅を着させられ、父も一番いい背広に大切にしている帽子、母親にいたってはウチにこんなご夫人がいたんだろうかという変身ぶりでした。そして、百貨店に行く時は、必ず映画がセットになっていました。百貨店に行く、それだけで、もうワクワクだったのです。百貨店はエンターテインメントだったのです。

こうした百貨店に行く際に抱くワクワク感は、百貨店の演出にもあります。例えば、今年4月に100歳を迎えた日本橋三越本店のライオンや、同店の4層吹き抜けに届かんばかりの「天女(まごころ)像」(佐藤玄々)がそびえる中央ホール、大阪梅田にある阪急うめだ本店の重厚なファサードやきらびやかな天井、9階に設けられた3フロア吹き抜けの広場なども、そうした劇場的空間の演出のひとつと言っていいでしょう。

このようにハードウェア面での演出が目立ちがちですが、実はそれ以上に百貨店の劇場的演出を盛り上げているのが「接客」です。開店時に店員が並んで、うやうやしくお客様を迎え入れたり、エレベータの乗降をエレベータガールが案内したり、商品を渡す際にわざわざカウンターから客側に出てきて手渡したり…、上げればキリがありません。こうした接客を過剰だと感じる方も少なからずいらっしゃるようですが、これを演出だと思って楽しめばいいのだと思います。ワクワクを感じて、百貨店を楽しんでもらえたらな、と思います。





ところで、そんな百貨店のワクワクを音楽にのせた歌が話題になっています。矢野顕子さんが手がけた伊勢丹オフィシャルソング『ISETAN-TAN-TAN』です。伊勢丹が大好きという矢野顕子さんが同店のショッピングバッグの柄として知られるタータン柄のリニューアルに合わせて制作されたそうです。コーラスには娘の坂本美雨さんが参加しています。

この曲に合わせて、伊勢丹の店員自らが踊るプロモーションビデオが話題に拍車をかけています。同店がこうしたプロモーションビデオを制作するのは今回が初めてという事ですが、僕の知る限りでは店員が踊るオフィシャルのプロモーションビデオなんて、初耳です。ビデオ制作に参加したのは、同店の国内はもちろん世界中の各店から、販売員を中心に約500名以上。振付はPerfumeの振付やライブ演出を手掛けているMIKIKOさん。

冒頭のカフェシーンでフラッシュモブかと思わせる演出がうまいな〜と思わせます。そして、開店時のお迎えを思わせるシーン、シーン転換で案内嬢が次のシーンへ誘う演出。もうそこここに百貨店体験が詰まっています。なんといっても、アッコちゃんのワクワク感いっぱいの楽曲(ご本人も2′38″ごろに登場します)、楽しそうに踊る店員のみなさんの表情がグッドです。

ね、百貨店、楽しそうでしょ。

『ISETAN-TAN-TAN』はiTunesで購入できます。
ISETAN-TAN-TAN - Single 矢野顕子


   


2014年5月19日

誰から戦地に行くのか? ではなく、どうやったら誰も戦地に行かずにすむか?

「広告批評」に30年ほど前に掲載された「まずは、総理から前線へ」(コピー:糸井重里さん、デザイン:浅葉克己さん)がまた話題になってます。もう何度目だろ?


「まず、総理から前線へ。」
デザイン:浅葉克己 コピー:糸井重里

近しい方々が、広告であることをすっかり置いてけぼりにして、有事に司令官が戦地に行けるわけない、お花畑左翼はこれだから、って(広告コピーに)マジレスしちゃう論議になっていて(この論議も数年に一度、忘れられた頃に出てくるんですよね)、ホントに残念です。

論議が起きるのは、この広告が反戦広告だという事を考えれば、十二分に役割を果たしているとは思いますが、この広告をネタにマジレスしちゃうのはどうにも的外れな感じがしちゃいます。少なくとも広告の事をまったく知らない素人じゃないんだから。わかりやすく言えば、ビートたけしが「赤信号、みんなで渡れば怖くない」って毒舌漫才やってた時に、交通ルールを守れとか、別に渡れるなら渡っちゃうのは自己責任だろ、と放送作家や芸能関係者がマジ論議しちゃってるのと同じ。どうにもカッコ悪いです。

ともあれ、戦争論議そのものは、ぜひやっていくべきだとは思いますが、「まずは、総理から前線へ」の部分にとらわれずに論議できたらいいんじゃないかと思います。

戦争になったら誰が戦地に行くのかではなく、まずは、戦争を起こさないために、僕たちになにができるのかを論議する事が先だと思うのです。その上で、どうしても回避できない事態になった場合、自分はどうするのかを、総理も含め腹づもりをしておけばいいのではないのでしょうか? 誰かの考えを自分の考えで押さえ込むような言い方をするのは、まさに忌わしき先の大戦で他でもない僕たち日本人がやってきた事で、これだけはやめていただきたいと思います。

それにしても、30年経っても話題になるのは、反戦広告という普遍性があるものだという事だけじゃなく、30年経っても日本の姿勢がブレブレだって事の現れでもあるってことですね。先を見据えてってわけでもないとは思いますが、いずれにしても、糸井さん、浅葉さんってやっぱりすごいですねぇ。

「とにかく死ぬのヤだもんね。」
デザイン:副田高行 コピー:糸井重里


ところで、天野祐吉さんがブログで「とにかく死ぬのヤだもんね。」の方を推しているんですが、もし、この広告はこっちのコピーだったら、どうなったんでしょうね。コピーとしては「とにかく死ぬのヤだもんね。」の方が僕もいい出来だと思いますし、好きなんですが(とくに「とにかく』の部分)、「まずは、総理から前線へ」のようにマジ論議のネタにはならなかったかもしれませんね。

2014年5月3日

MoMAで話題になった「ティム・バートンの世界」展がこの秋、東京へ!



怖いのに優しい、醜いのにかわいい、不気味なのに美しい、悲しいのに笑える。愛と狂気が錯綜し、毒のある温かさに包まれた独特な映像世界を生み出し続けているティム・バートン監督。「フランケンウィニー」、「シザーハンズ」、「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」、「チャーリーとチョコレート工場」、そして「アリス・イン・ワンダーランド」。彼の手になる名作、奇作を上げたらキリがない。彼ほど奇才という形容詞が似合うクリエイターはいないでしょう。

はじめて彼の作品に出会ったのは「ビートルジュース」。たまたま時間ができてフラッと入って見たのですが、仕事で疲れていたりして虫の居所が悪かったのもあって、映画の印象は最悪でした。ひどくふざけた冗談のような内容にかなり失望した記憶があります。それでも、異様なほどにこの独特な映像世界が心から離れませんでした。それから少しして「シザーハンズ」という作品が話題になりました。僕はその監督の名前を見て、一気に見る気が失せました。残念な事に僕は「シザーハンズ」を公開時に見逃してしまったのです。

その数年後、ディズニーで「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」が公開になって、当時、ディズニー・アニメならなんでも手放しで喜んで見に行っていた事もあり、監督の名前も気にせず見に行きました。この時、同時公開された「フランケンウィニー」も合わせて、ティム・バートンという希有な才能とその独特な美の世界に、完全にノックアウトされました。それから以後、僕はすっかり彼のファンになってしまい、監督作品のほとんどを見ることになりました。

2009年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)においてティム・バートン監督の展覧会が開かれ、大反響になっていると伝え聞きました。ぜひ見に行きたいと思ったのですが、残念ながらMoMAにまで足を運ぶ事はかないませんでした。それでも、これほどの反響ならすぐに日本にも巡回するだろうと高をくくっていたら、なんと日本にやってくるまで、実に5年もかかかってしまいました。そう、この秋、ティム・バートン監督の回顧展『ティム・バートンの世界』展が東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催されるのです。



TIM BURTON -world of Tim Burton exhibition Prague 2014 promo
from Bernie Roux on Vimeo.


同展は2009年にMoMAで開催されて以降、ベルリンやパリで公開され、現在はプラハで開催されています。ご自身による膨大な量のスケッチやデッサン、オブジェなど約500点が日本初公開となる同展では、コレまでの作品や未公開映像作品なども特別上映されるとの事です。ぜひ「ビートルジュース」と「シザーハンズ」をスクリーンでリベンジしたいと思います。公開直前はまさに第27回東京国際映画祭(10月23日〜31日)が開催される次期となり、監督本人の登場も期待されます。いまから秋が本当に楽しみです。

ところで、なぜ僕が最初、ティム・バートンに嫌悪を感じ、その後ファンになったのかは、エドガー・アラン・ポー、レイ・ハリーハウゼン、ゴジラといった彼との共通点にあったことに、後になってわかりました。

【開催概要】
ティム・バートンの世界 THE WORLD OF TIM BURTON

会期:2014年11月1日(土)〜2015年1月4日(日)
11:00〜22:00(土日祝は23:00まで)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木)
料金:一般 1,800円、高校生・大学生 1,300円、こども(4歳〜中学生)800円

本展は2015年2月より大阪にも巡回します。会場など詳細がわかりましたら、続報します!