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『Que voz feio(醜い声)』山本良浩 アート部門 大賞 |
“いまやすべての芸術作品がメディアアートになるのでジャンルの区分は無効。であればテクノロジーや奇抜な変換手法に偏ったものではなく、コンテンツの質が重要”といった主旨の事を主査の先生がおっしゃっていたと記憶していますが、たしかに成熟したテクノロジーではアートに与えるインパクトは小さくなっているのかもしれませんが、これまでアートに縁遠かった人々をアートに近づける役割をメディアアートが果たしてきた事は忘れてはならないのではないしょうか? メ芸は通常の美術展とは一線を画する、祝祭空間としてクリエイティブを楽しむ場でもあって欲しいと僕は思います。
大賞は地味めな映像作品でしたが、優秀賞にはこれぞメディアアート、という感じの作品もありました。とりわけインパクトがあったのは『particles』(真鍋大度 / 石橋素)。暗闇の空間を複数のライトボールが光の粒子(パーティクル)のように光のパターンや音を変化させながら駆け巡る作品で、コントロールパネルを使って、ライトボールの動きを操作できるインタラクティブ性も楽しいです。昨年、YCAMで公開されたもので実物を見たのはこれが初めてとなりました。
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優秀賞:「particles」真鍋大度 / 石橋素 |
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「particles」のコントロールパネル。 下段に表示されているボタンのイメージにあわせ、 レールを走るライトボールの光るパターンや音が変化する |
同じく優秀賞の『BLA BLA』(Vincent Morisset)もインタラクションが楽しい作品です。ヴァンサン・モリセー監督と国立カナダ映画制作庁の制作によるもので、操作台にあるトラックパッドを操作して、画面内のキャラクターをクリックすると、キャラクターの顔が赤くなったり、黄色になったりとさまざまな事が起きます。さらに突然どこかに落下していき、風が吹いて雷が鳴ったりと画面に変化が起こると同時に、体験者の目の前にある大きな送風機が回りはじめ、フラッシュライトが焚かれ、画面内と同じような体験ができます。
この他にインタラクションを使った作品では新人賞の『Monkey Business』(Ralph KISTLER / Jan SIEBER)が楽しいです。サルのぬいぐるみが人の動きをまねて踊るという、言ってみればシンプルな発想のインタラクティブ・インスタレーションですが、ロボットの人マネでは感じられない、サルである事でコミカルで愛らしい印象をうけます。
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優秀賞:「BLA BLA」Vincent MORISSET |
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新人賞『Monkey Business』Ralph KISTLER / Jan SIEBER
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もともとその傾向はあったと思いますが、今回は特に映像作品で、かつアニメーションが多いという印象がありました。優秀賞の『The Saddest Day of My Youth』(Brian Alfred)はスペースシャトルのチャレンジャー号爆発事故というショッキングな映像を、すべてのフレームをドローイングで制作しアニメ化したもの。リアルなナレーションとアニメーションの映像に、当時の記憶が生々しく再現されました。
また、新人賞に選ばれた『HIMATSUBUSHI』(植木秀治)は東京ー静岡間の新幹線の車窓にブルーバックで合成された白い人影のキャラクターが家屋や電柱の上を飛び跳ねていくというもの。映像内をあり得ない動き方で飛び回る人影がユニークな作品です。これもアニメ的と言えます。
アニメという事で大変印象深かったのが審査員推薦作品の『BIND DRIVE』(佐藤雅晴)です。現代の原風景ともいうべき郊外の宅地や田畑、学校などの風景に土砂降りの雨が降り続ける映像に、ド演歌が流れ続けます。後半では乗用車に乗った男女がそのド演歌を歌っており、さらにこの男女が男性が翼が生えた悪魔で、女性が頭に輪っかを持った天使、それも妊娠している!なのにド演歌というのが???の作品。これが参加者の間では好評価で優秀賞でも良かったのでは?という声もありました。
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優秀賞『The Saddest Day of My Youth』Brian ALFRED |
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新人賞『HIMATSUBUSHI』植木秀治
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審査員推薦作品『BIND DRIVE』佐藤 雅晴
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