『坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア』がNTTインターコミュニケーションセンター(ICC)において、2024年3月10日(日)まで開催中だ。
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展示の様子 |
2023年3月28日に逝去した坂本龍一さんは広く一般には音楽家として知られた存在だったが、早くからその活動の領域をひろげ、アートとも深く関わってきたアーティストでもあった。本展では、そうしたアーティスト・坂本龍一が国内外、年齢の垣根を越えてコラボレーションしてきた、さまざまなアーティストとの作品を紹介している。
坂本さんは90年代初頭の黎明期よりインターネットに関心を持ち、インターネット・ライヴを実施するなど、作品へのメディア・テクノロジーの導入を積極的に行なってきた。とりわけアート&サイエンスを標榜し、ヴァーチャル・リアリティやインタラクティヴ技術などの最先端テクノロジーを使ったメディア・アート作品を紹介してきたICCと坂本さんは、同館の1991年の開館以前のプレ活動期間に遡り、展覧会の企画に連動した「ローリー・アンダーソン展」でのコンサート(2005年)などにも関わってきた。
坂元さんとアーティストの関係は、1996年のメディア・アーティスト・岩井俊雄とのコラボレーションにはじまり、2000年代以降、カールステン・ニコライやダムタイプの高谷史郎といったアーティストとのインスタレーション制作など、現代美術やメディア・アートの分野で多くの作品制作を行なっている。
2017年にはICC開館20周年記念企画展「坂本龍一 with 高谷史郎|設置音楽2 IS YOUR TIME」を開催し、同展は台湾に巡回、作品《IS YOUR TIME》は北京、成都での坂本さんの個展にも出品された。ダムタイプのメンバーとして迎え入れられた坂本さんが参加したアーティゾン美術館での「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」の展示も印象的だった。本展では坂本さんが手掛けたサウンドインスタレーション作品《Playback 2022》が展示されている。
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高谷史郎《Piano 20110311》2018/23年 |
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Dumb Type + Ryuichi Sakamoto《Playback 2022》2022/23年 |
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坂本龍一ディレクションによる世界各地のフィールド・レコーディング音源により再構成された |
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会場では「Tokyo 2021」が聴ける |
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これら16枚のレコードに坂本自身の未発表音源「Tokyo 2021」が収録された全17枚組の『Ryuichi Sakamoto | Art Box Project 2023: Dumb Type + Ryuichi Sakamoto, Playback 2022』(世界限定100セット)を展示 |
本展では、メディア・アート分野においても少なからず功績を残した坂本さんを追悼するとともに、ライゾマティクスの真鍋大度さんを共同キュレーターとして迎え、坂本さんの残した演奏データをもとにした作品や、ダムタイプ、カイル・マクドナルド、毛利悠子、さらに李禹煥といった国内外のアーティストによる坂本さんとの関わりのある作品が展示されている。坂本さんとの彼らアーティストとの関わりを作品を通じて構成することで、アーティスト・坂本龍一を浮き彫りにし、未来に向けて坂本龍一像を残していく、価値ある展覧会になっている。必見。
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坂本龍一+真鍋大度《センシング・ストリームズ-不可視、不可聴》(2014/23年) |
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共同キュレーターのライゾマティクス・真鍋大度さん |
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毛利悠子《そよぎ またはエコー》2017年(部分) |
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李さんの案内で「李禹煥」展を鑑賞する坂本さんとの貴重なショット |
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李禹煥《祈り》(2022年) |
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李禹煥《遥かなるサウンド》(2022年) |
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《遥かなるサウンド》は、坂本龍一の生前最後のオリジナル・アルバム『12』のジャケットのために描き下ろされたドローイング作品。ジャケットでは李のアイデアにより、ドローイング部分のみを13度の角度に傾けて完成されている |
ここからは個人的な話になりますが、坂本龍一さんという存在は、同じYMOのメンバーで、ファッショニスタとして、ドラマーとして強く敬愛する高橋幸宏さんとともに、郷里の仙台で行われたYMOのツアーで出会ってから、僕の音楽人生に大いに影響を与えてくれました。そして、坂本さんが岩井俊雄さんとともにアーティストとして活動されたことは、中途半端にアートをかじっていた僕を強くアートに引き寄せた「事件」でもありました。
その後、偶然にも(いまはなき)渋谷パルコパート2の地下で坂本さんと高橋さんが揃っているところに遭遇したり、MP3など音楽著作権の勉強会で坂本さんにインタビューする機会や、酒席に同席させていただくなど、また坂本さんは実は激高すると、ここでは書けないような罵声が飛び出す、熱い人だということを知ったりと、個人的にも関わらせていただくことができました。
ICCでの内覧会でも何度かご挨拶させていただき、東日本大震災を受けての坂本さんの活動に、郷里の宮城との関わりから、坂本さんは僕にとって、ますますインパクトのある存在でした。
直接、関係のないエピソードですが、雨の降る青山のアニエス・ベーに行ったとき、たまたま目にしたハットを手に取ろうとして、お互いにどうぞと譲り合ってしまった先方の男性が俳優のジョン・ローンさん(坂本さんの転機となった映画音楽を担当した「ラストエンペラー」の主人公・溥儀を演じた)だったのには驚きました。
ハットはローンさんに譲ったのですが、その場でかぶって見せてくれたり、一応、握手を求めた僕にお付きの方が「プライベートなので」と制したのを遮って、「僕と彼はもう友達だよ」と言ってにこやかに握手してくれました。このことも坂本さんとセットで思い出す良い記憶です。
【開催概要】
展覧会名:『坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア』
会期:2023年12月16日(土)~2024年3月10日(日)
会場:NTTインターコミュニケーションセンター(初台)
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