12月14日、『磯崎新 都市ソラリス』展がNTTインターコミュニケーションセンターで開幕しました。1997年、同館のオープニング企画展として建築家・磯崎新さん監修による「海市——もうひとつのユートピア」が開催されました。本展では再び磯崎さんを迎え、1960年代から“海市ーMirage City” を経て現在に至るまで、磯崎さんが手がけてきた都市計画プロジェクトの変遷をたどりつつ、海市展同様に複数の参加者によって変化するワーク・イン・プログレスの展示が展開されます。
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ICCの展示空間をふたつに分割して展示。手前には鄭東新区龍湖地区副CBDの1/200の模型が |
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1997年にICCがオープンした際の企画展は磯崎さんが監修した「海市—もうひとつのユートピア」展でした |
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レセプションで挨拶する磯崎新さん。御歳82歳なれど精力的に活動されている |
メインとなる展示は、中国河南省鄭州市で建設が進む「鄭東新区龍湖地区副CBD(Central Business District:中心業務地区)」の模型とその模型を舞台に展開するメディア・アーティストや建築家が手がけるインスタレーションです。現在展開しているのは、doubleNegatives Architecture(ダブルネガティブス・アーキテクチャー)による「理解(そして私たちは立ち尽くしている)」。また、奥のスペースでは鄭東新区 都市ワークショップ 第一期として、東京藝術大学 芸術情報センターの砂山太一さん、永田康祐さんによる「I saw a girl with a telescope」が展開されています。会期中の入れ替えも何度かあるそうで、Rhizomatiks(ライゾマティックス)が手がけるインスタレーションも予定されています。
「鄭東新区龍湖地区副CBD」とは、磯崎さんが出がけている最新のプロジェクトで、中国における東西南北を結ぶ交点となる交通の要衝・鄭州市において進められている都市計画です。“二十四節気” にもとづいた暦や時間をデザインに取り入れ、旧市街地東部の龍湖を囲むように浮かぶ環状の島に立ち並ぶ高層ビル群は、磯崎さんをはじめSANNAなど世界中の著名な建築家が手がけています。このプロジェクトは故黒川紀章さんから磯崎さんが引き継いで進めているものです。
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鄭東新区龍湖地区副CBDの模型。高層ビル群が龍湖を取り囲むように立ち並ぶ |
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鄭東新区龍湖地区副CBDの建設が進められている建築物 |
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I saw a girl with a telescope。参加者が好きに組み直していいとか。 砂山さん、永田さんが参加するgh/eは「LOEWE展2013」での 4D ORIGAMIが記憶に新しいが、どのように展開していくのか楽しみ |
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I saw a girl with a telescope(部分) なんらかのデータを半田ごてを応用したもので熱でスチロールを溶かして形成している |
この他、大阪万博の「お祭り広場」をはじめ、磯崎さんがこれまで手がけてきたプロジェクトの数々を紹介しています。「東京都新都庁舎」は1986年に実施されたコンペに磯崎新アトリエとして提案したもの。高層建築とする都側の条件に対して真っ向から中層建築として提案しており、都市の核となるシティホールとしての提案は単なる建築に留まらない都市の問題に挑戦しています。ご存知のように都庁舎には丹下健三案が採用されましたが、僕はいまだに磯崎案が都庁になっていたら、東京の表情は大きく変わったと考えています。
「海市=ミラージュシティ」は1994年に中国・珠海市からの依頼により、中国の経済特区のひとつとしてマカオ沖に人工島をつくり、そこに文化、学術、会議、居住といった施設を計画していたもの。海市には海上都市と中国語で蜃気楼の二重の意味がありますが、まさに海市のプロジェクトは蜃気楼のごとく消え去りました。
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1986年に実施された東京都新都庁舎コンペに提案された磯崎新アトリエ案 |
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「海市」の展示 |
「海市」展では「プロトタイプ、シグネチャーズ、ヴィジターズ、インターネットの<しまじま>が生成されました」と語る磯崎さんは「<しまじま>がギャラクシーに成長しつつある現在、『惑星ソラリス』を参照しながら,集合知,免疫性(イムニタス)などを都市論として討議する場をつくりだしたい」としています。
ここでなぜソラリスなんでしょう? 「惑星ソラリス」は知的生命体としての海を持つソラリスと人類の関わりを描いたもので、1961年にSF作家スタニスワフ・レムが発表したSF小説「ソラリスの陽のもとに」であり、1972年に公開されたアンドレイ・タルコフスキー監督の名を知らしめたSF映画の金字塔「惑星ソラリス」を指しています。レムのソラリスは知性を持つ巨大な存在であるソラリスと人類がコミュニケーションを図ろうとする事に物語の主軸が置かれていますが、タルコフスキーの映画では主人公の心理学者クリスの記憶から、ソラリスが実体化させたかつての自殺した妻ハリーとの人間関係に重きを置いています。公開当時、その難解な映像表現もあってか、原作との乖離のあるタルコフスキーの映画はSFファンからはあまり受け入れられませんでした。
今回、そのソラリスを参照して討議を行うという事ですが、それが一体どういう事を意味するのか大変興味をそそられます。知性を持つ巨大な存在=集合知とも読めるし、ソーシャルネットワークはすでに存在しない存在を(データを抹消させない限り)仮想的に存在させてしまう事を実現しています。いずれにせよ、都市に住まい、働く人々と、都市という巨大な存在がどのようにコミュニケーションを取り、どのような未来を形作っていくのか、本展で垣間みられることを期待しています。
この機会に「惑星ソラリス」を見直してみるのもいいかもしれないな、と思ったら、なんとリマスターされた映像がBlu-ray版として4月にリリースされたばかりとか。以前、DVDで見た時はあまりのノイズに見る気がしなくなったのですが、今度はかなりよさそうです。リマスターのDVDも出ているようなので、本展に行く前に「惑星ソラリス」。いいかもしれませんよ。
「磯崎新 都市ソラリス」展
会期:2013年12月14日(土)〜2014年3月2日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA
開館時間:午前11時—午後6時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合翌日),年末年始(12/28—1/3)ほか
入場料:一般・大学生500円/高校生以下無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
協力:株式会社磯崎新アトリエ,株式会社イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ,MISA SHIN GALLERY,東京藝術大学 芸術情報センター
問い合わせ:フリーダイヤル 0120-144199
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