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2016年8月3日

メーヴェが大空を舞った!「できるはずない」をやってのけた『オープンスカイ』の軌跡


メディアアーティストの八谷和彦さんが長年、続けているプロジェクト「オープンスカイ」。いわゆるメーヴェを現実のものとして、大空を翔けるプロジェクトです。メーヴェという名前は知らなくとも、『風の谷のナウシカ』でナウシカが操る一人乗りのグライダーといえば、知らない方はいないでしょう。


このプロジェクトのひとつのゴールとも言える、ジェットエンジンを搭載した実機での公開フライトが、2016年7月31日に北海道滝川市のたきかわスカイパークで行われました。10年以上にわたって進められてきたプロジェクトで、途中休止期間があったり、エンジンの調達が難しくなったり、紆余曲折を経て、満を持してのフライトだっただけに、僕も北海道まで行って、その勇姿をこの目でみたかったです。


僕が八谷さんのこの「オープンスカイ」にはじめてふれたのは、2003年の利根川河川敷での[1/2モデル]のラジコン機の飛行でした。当時はなんだかひさびさにアートに触れたくなっていた時期で、たまたまこの実験飛行のことを知って、うちからチャリで行ったものの(利根川はうちから車で10分ほど)、すでに実験は終わっていました。


それから数年経って、初の実物大の滑空機である[M-01]が製作され「愛・地球博」で展示されましたが、これにも残念ながら行けず、その翌年2006年にICCで開催された「オープンスカイ2.0」でようやく実機(?)に触れることができました。この時は取材でもなんでもなく、普通に展覧会を見に行ったのですが、なぜか写真を撮っていました。


こんな感じで実際に乗った気分が味わえました。「オープンスカイ2.0」(2006年/ICC)


その後、二機目の滑空機として製作された[M-02]は実際にパイロットである八谷さんが搭乗して、飛行する実験が行われました。この時はまだ動力は搭載せず、ゴム索発航(人が引っ張って、ゴムパッチン方式で飛ばします)で飛ばしていました。


2008年に行われた「金沢アートプラットフォーム2008」において、「オープンスカイ」展示が行われ、金沢市内の公園でテストフライトが行われました。この時、取材に行っていた僕も、引っ張り要員に加えていただき、実際に飛び上がって、着地するのを目の前で見ることができました。

離陸から着地まで撮影。「金沢アートプラットフォーム2008」(2008年)

フライトを終えた八谷さん。「金沢アートプラットフォーム2008」(2008年)


その後、実際にジェットエンジンを積んで空飛ぶ姿を心待ちにしていましたが、2010年にエンジンを搭載した[M-02J]の滑走試験の際にエンジントラブルの発生があり、約2年のプロジェクト休止を余儀なくされました。その後、機体改造、エンジン換装が行われ、2012年に野田スポーツ公園での滑走実験が行われ、2013年にはついに国土交通省航空局から試験飛行許可がおり、ジャンプ飛行が行われました。


いよいよジェットエンジンでの飛行を目前に、2013年にはアーツ千代田3331で「OPENSKY 3.0」が行われ、[M-02J]をはじめ、プロジェクトで製作されたすべての実験機やフライトシュミレータなどが展示されました。レッドブル・エアレースで知られるエアロバティックを知ったのは、この時でした。


M-02Jを前に熱心に説明する八谷さん。「OPENSKY 3.0」(2013年/アーツ千代田3331)

ジェットエンジンを搭載したM-02J。「OPENSKY 3.0」(2013年/アーツ千代田3331)
ジェットエンジンがおさまってます。「OPENSKY 3.0」(2013年/アーツ千代田3331)
忘れがちなのですが、アートプロジェクトなので、パイロットのユニフォームやヘルメットを含め、
トータルでデザインされています。「OPENSKY 3.0」(2013年/アーツ千代田3331)

その後のテストフライトは北海道滝川市のたきかわスカイパークで継続されており、気軽に取材に行けなくなりましたが、2014年の公開試験飛行、そして今回の公開飛行などに常に注目しておりました。

今回の公開飛行成功の知らせをうけ、十年以上に渡る八谷さんの偉業を讃えたいと思います。八谷さん、おめでとう!



これはおまけ。

OpenSky
http://www.petworks.co.jp/~hachiya/works/OpenSky.html

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2015年12月16日

グーグルの記者懇親会終わって、ようやくWOW。まずは新作の映像作品を見ないと。
Posted by 千葉 英寿 on 2015年12月16日

グーグルの記者懇親会。恒例のライトニングトークがスタート。
Posted by 千葉 英寿 on 2015年12月16日

2015年12月4日

東京コミコンの記者発表会にきています。この後、ウォズが登壇します。
Posted by 千葉 英寿 on 2015年12月3日

2015年11月27日

第19回文化庁メディア芸術祭の記者発表会に国立新美術館にきています。
Posted by 千葉 英寿 on 2015年11月26日

2015年11月26日

これから『あなたが選ぶ展覧会2015』の生配信です。
Posted by 千葉 英寿 on 2015年11月26日

2015年11月16日

最近、この広告、地下鉄とかで見かけません? 今日はこの広告の「Audible」の記者発表会に行ってきました。Audibleってオーディオブックのフォーマットだとばかり思っていたのですが、オーディオブックのサービスとしてアマゾンが展開をはじめ...
Posted by 千葉 英寿 on 2015年11月16日

2015年2月4日

第18回文化庁メディア芸術祭に行ってきた![フォトレポ]

ひとまず写真のみ! 追って記事書きます(笑)

平成26年度[第18回]文化庁メディア芸術祭が国立新美術館において開幕しました。
メディア芸術祭はアート、エンターテインメント、アニメーション、マンガの4部門で世界71の国と地域から3,853の応募の中から選ばれた受賞作品と功労賞受賞者の功績などが紹介されます。


大賞受賞者と功労賞受賞者のみなさん

【アート部門】
※大賞該当作品なし

アート部門 優秀賞
「センシング・ストリームズ ー不可視、不可聴」
メディアインスタレーション
坂本龍一/真鍋大度[日本]
アート部門 優秀賞
「Nyloïd」
メディアパフォーマンス
Cod.Act(Michel DECOSTERD / Andre DECOSTERD)[スイス] 
アート部門 優秀賞
「これは映画ではないらしい」
メディアインスタレーション
五島 一浩[日本]
アート部門 新人賞
「Symbiotic Machine」
ハイブリットアート
Ivan HENRIQUES[ブラジル]
アート部門 審査委員会推薦作品
「I was looking for Park Hyatt Tokyo」
グラフィックアート
Jorgen AXELVALL[スウェーデン]

【エンターテインメント部門】

エンターテインメント部門 大賞
「Ingress」
ゲーム、アプリケーション
Google`s Niantic Labs(創業者:John HANKE)[米国]

エンターテインメント部門 優秀賞
「のらもじ発見プロジェクト」
ウェブ、オープンソースプロジェクト
下浜 臨太郎/西村 斉輝/若岡 伸也[日本]
エンターテインメント部門 優秀賞
「handiii」
ガジェット
近藤 玄大/山浦 博志/小西 哲哉[日本]
エンターテインメント部門 優秀賞
「handiii」ガジェット
近藤 玄大/山浦 博志/小西 哲哉[日本]







2015年2月3日

2020年、上野の夜が変わる!? 上野「文化の杜」新構想シンポジウム開催

1月31日に東京藝術大学で行われた『上野「文化の杜」新構想シンポジウム』に行ってきました。


この「文化の杜」新構想というのは、東京国立博物館、国立科学博物館、東京都美術館、上野恩賜動物公園、東京藝術大学、東京文化会館など、日本を代表する文化・学術関連の施設が集中する上野恩賜公園を中心としたエリアである上野地区を、国際文化都市、交流拠点として年間3000万人の来街者数を目指した「文化の杜」としてするべく検討が進められているものです。

本シンポジウムでは、2014年8月に公表された新構想中間報告に対して募集された意見結果の報告とともに、本構想の共同発起人である東京藝術大学の宮田亮平学長がモデレータを、文化庁の青柳正規長官がコメンテータを務め、照明デザイナーの石井幹子さん、東京都生活文化局長の小林清さん、NHK解説委員の中谷日出さん、東京藝術大学の日比野克彦教授、作家・谷根千工房の森まゆみさんら、5名のパネラーによる「新構想」のための提案を行うパネルディスカッションが行われました。


錚々たる面々のプレゼンテーションが行われたわけですが、往々にしてこうしたシンポジウムでは革新的なアイディアが披露されることはあまり期待できないもので、全体的にはわりと凡庸な提案で多少がっかりもしましたが、それでもいくつかはこれは!という提案もありました。

3000万の来街者を目標に、という中間報告に対して、「そんなに多くの人がきたら、上野の静かな環境が阻害される」といった声が一般の方からの意見書にありましたが、かねてからあの人っ子ひとりいない(ある意味、ホームレスと出歯亀しかいない)上野の夜を考えたら、昼間増やさずとも夜間にやってくる人がいれば、来街者も増やせて、街の表情も変わっていいだろうと思っていましたが、さすが照明デザイナー、石井幹子さんが夜間の活用を提案していました。小林氏は芸術祭を提案していました。

日比野克彦さんは東京都美術館と藝大がコラボして進めている「あいうえの」「トビらー」の現状の活動の紹介に終始しましたが、上野に必要なのはハードじゃなく、ソフトという面を考えれば、今後の展開が楽しみです。谷根千の森まゆみさんの歴史のある上野を重視したいという発言はとても重要だと思うし、単純に過去の遺物を再興しようということではなく、いまの時代に合った、新しい手法での表現で実現できるだろうと感じました。

そういったことから、アートディレクターでもある中谷日出さんの徹底して最先端の映像技術を駆使し、夜の上野を盛り上げる構想は、実現可能性も高く、他のパネラーのみなさんの提案を実現に導く、説得力のある提案ではないかと思いました。とりわけ、「BIG SCREEN PLAZA」と名付けられた噴水広場に8Kのスクリーンを設置し、日本文化を紹介する映像を上映する施設は、インパクトが大きく、映像なのでコンテンツの変更も容易なものです。また、その噴水を使った「Water Fountain Projection」はエンターテインメント性が高く、暗く寂しかった上野の森の夜を華やかに彩ってくれそうです。

BIG SCREEN PLAZA(提供:中谷日出氏)

Water Fountain Projection(提供:中谷日出氏)

中には、新たな建造物を建てよ、という声もあるようですが、こうした映像施設があれば、わざわざ上野の森を潰して、建物を建てる必要なんかありません。僕も個人的には上野の森に新たな建造物はいらないと思います。

それよりも映像で盛り上がる噴水広場の地下に、上野駅からそれぞれの施設にアクセスできる広場を作ってはどうでしょう? そうすれば、地上で映像を楽しむ人々はゆったり映像を楽しめるし、増える来街者対策になるだろうと思います。もちろん桜の季節にも少しでも余裕を持って桜を楽しめるのではないでしょうか? ぜひ、僕から提案したいのは、噴水をレアンドロ・エルリッヒさんに作りなおしてもらうのです。世界中で、ぜひ訪れてみたい噴水のひとつになると思うのですが。

2014年2月25日

ウェアラブルとはこういうこと。専門店だから創りえたFUN`IKI glass

以前からウェアラブル・デバイスの中で、とりわけヘッドマウントディスプレイタイプの拡張現実ウェアラブルコンピュータ(ようするにメガネ型の情報端末ですね)について、「こんなダサいものかけたくない」とか、「こんなのかけてるヤツが溢れかえった街になんかいたくない」とか、あちこちで発言しては、グーグルグラスとかに注目しているみ〜んなから冷ややかな目で見られていました。

だって、ダサいものはダサい。そういや時計型もギャラクシーギアなんて、超絶ダサいものも出てますね。まぁ、子どものおもちゃみたいなものでも、ガジェット好きの人にとっては、先進性とか新規性とか、あ、それととにかく目立ちたいって人にとっては、ダサさなんか気にならないんでしょうけどね。

ウェアラブルデバイスに関する、そんな態度を示している僕に同調してくださる方がいらっしゃいまして、その方が所属する“メガネのパリミキ”の㈱三城ホールディングスと情報科学芸術大学大学院(IAMAS)赤松正行教授、IAMAS卒業生らによるベンチャーの㈱間チルダらによって組織された「FUN`IKIプロジェクト」が、現在、バルセロナで開催中のMobile World Congress 2014において、メガネ型情報端末「雰囲気メガネ」を発表しました。

見た目はメガネそのもの


まず、このデザイン。現物を見てみない事には正確な判断はできませんが、これはまごうことなくメガネです。小3からメガネをかけ続けている僕じゃなくとも、これはあきらかにメガネのデザインです。デザインの好き嫌いはあるでしょうが、すくなくともスカウターみたいなヘンテコなものではありませんね。これなら映画館にかけて行っても、呼び止められたり、警備に追い出されたりしません。もっとも、この雰囲気メガネでは映画を盗撮したりはできないと思いますけど。

雰囲気メガネはスマートフォンやパソコンの代わりを果たす位置づけのデバイスではなさそうです。資料によれば、

「歩行中や打合せ、PCの作業時においてもフルカラーLEDライトの点滅と小型スピーカーからのサウンドによって、周囲に気付かれることなく電話の着信やメールの受信、スケジュールやタイマーなどのさまざまな情報を把握することができます。従来のスマートフォンだけでは難しかった役割を担い、極めてシンプルな機能とナチュラルな使用感を目指した、ライフスタイルにとけこむ最新型のウェアラブル・デバイス」

とのこと。要するに、打ち合わせや移動中の電車内、デート中とか、所構わず鳴り出す “空気を読まない” ケータイやスマホの代わりに、さりげなく知らせてくれるというわけです。光や音だけでどれだけの情報が伝わるのかは、ぜひ試してみたいところです。もっとも、そこに情報量を求めすぎるから、不必要な機能が満載したダサデバイスになっちゃうのかもしれませんね。そのあたりの機能については、連動するスマートフォン側のアプリをアップデートすることで機能追加できるようです。

このLEDで光る機能にはパーティなどで目立つカラフルなライトやリラックスできる落ち着いたライトなどがあるようですが、将来的にはこの光でコミュニケーションを取ったり、脳波を読み取って気持ちの状態を伝えたりといった事も可能かもしれませんね。


スマートフォンと連動して操作できます

まだまだ市民権を得るには時間がかかりそうなウェアラブル・デバイスにはこれぐらいの機能や見た目がちょうどいいのではないかと思います。一般発売時期は未定との事ですが、今後の展開に注目です。

【仕様】
重量:38.5g
通信:Bluetooth 4.0 Low Energy
バッテリー:リチャージャブル・リチウムイオン・バッテリー
ライト:フルカラーLED 6基
オーディオ:小型スピーカー 1基
センサー:照度センサー、加速度センサー

2013年12月24日

アウディR8を滝壺に? チームラボとアウディがアートでコラボ

表参道のAudi Forum Tokyoチームラボアウディによる展覧会『teamLab exhibit at Audi Forum Tokyo』を見てきました。展示のメインは、アウディのスポーツカー「Audi R8」を使ったプロジェクション・マッピングによるインスタレーション「The Waterfall on Audi R8」です。2階建てのショールームの階段の吹き抜けを活用した全長約16mの巨大な作品で、吹き抜けに設置した巨大なスクリーンと、その前にR8を配置し、ちょうど滝が岩に見立てたR8に落ちてくるように見えるというものです。

The Waterfall on Audi R8
階段から見下ろすと、より迫力があります

見上げるプロジェクションマッピングがいくらでもありますが、
見下ろせるのは珍しいかも

コンピュータ上にAudi R8を3Dで立体的に再現し、それを岩に見立て、そこに大量の水が流れ落ちてくる滝を、水の流れを水の粒子の連続体として物理計算し、その粒子の動きによって滝を描くというシミレーションをプロジェクション・マッピングとして、実際のスクリーンとR8に投影しています。映像の解像度はハイビジョンの7倍となる7K。これを二階に設置した13台のプロジェクターから投影しています。階段の吹き抜けに設置された事で、階段の途中や二階から見下ろしたりでき、さながら現実の滝見にきているようです。

チームラボによる滝の作品と言えば、2013年7月に大阪で開催された「堂島リバービエンナーレ2013」での「憑依する滝/Universe of Water Particles」が記憶に新しいのですが、本作はその技術的背景を用い、スケールアップしたものと言えそう。






二階には、伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」に着想を得たインタラクティブな作品「世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う」が8Kのプロジェクターに投影されていました。また、滝に打たれる自分を撮影して、ソーシャルメディアに投稿できる「teamLabCamera」も出展。こちらは東京では初お目見えとなりました。

『teamLab exhibit at Audi Forum Tokyo』は2014年1月5日まで開催されていますが、年末年始の12月29日〜1月2日は閉館していますのでご注意を。


「世界は、統合されつつ、分割もされ、繰り返しつつ、いつも違う」

『teamLab exhibit at Audi Forum Tokyo』
会期:2013年12月19日(木)〜2014年1月5日(日)
   ※12月29日〜1月2日は年末の為閉館(3日より再開)
開館時間:10:00〜19:00
会場:Audi Forum Tokyo(東京都渋谷区神宮前6-12-18)
入場無料



2013年12月16日

「惑星ソラリス」と建築の関係って? 『磯崎新 都市ソラリス展』が開幕

12月14日、『磯崎新 都市ソラリス』展がNTTインターコミュニケーションセンターで開幕しました。1997年、同館のオープニング企画展として建築家・磯崎新さん監修による「海市——もうひとつのユートピア」が開催されました。本展では再び磯崎さんを迎え、1960年代から“海市ーMirage City” を経て現在に至るまで、磯崎さんが手がけてきた都市計画プロジェクトの変遷をたどりつつ、海市展同様に複数の参加者によって変化するワーク・イン・プログレスの展示が展開されます。


ICCの展示空間をふたつに分割して展示。手前には鄭東新区龍湖地区副CBDの1/200の模型が

1997年にICCがオープンした際の企画展は磯崎さんが監修した「海市—もうひとつのユートピア」展でした

レセプションで挨拶する磯崎新さん。御歳82歳なれど精力的に活動されている

メインとなる展示は、中国河南省鄭州市で建設が進む「鄭東新区龍湖地区副CBD(Central Business District:中心業務地区)」の模型とその模型を舞台に展開するメディア・アーティストや建築家が手がけるインスタレーションです。現在展開しているのは、doubleNegatives Architecture(ダブルネガティブス・アーキテクチャー)による「理解(そして私たちは立ち尽くしている)」。また、奥のスペースでは鄭東新区 都市ワークショップ 第一期として、東京藝術大学 芸術情報センターの砂山太一さん、永田康祐さんによる「I saw a girl with a telescope」が展開されています。会期中の入れ替えも何度かあるそうで、Rhizomatiks(ライゾマティックス)が手がけるインスタレーションも予定されています。

「鄭東新区龍湖地区副CBD」とは、磯崎さんが出がけている最新のプロジェクトで、中国における東西南北を結ぶ交点となる交通の要衝・鄭州市において進められている都市計画です。“二十四節気” にもとづいた暦や時間をデザインに取り入れ、旧市街地東部の龍湖を囲むように浮かぶ環状の島に立ち並ぶ高層ビル群は、磯崎さんをはじめSANNAなど世界中の著名な建築家が手がけています。このプロジェクトは故黒川紀章さんから磯崎さんが引き継いで進めているものです。


鄭東新区龍湖地区副CBDの模型。高層ビル群が龍湖を取り囲むように立ち並ぶ

鄭東新区龍湖地区副CBDの建設が進められている建築物

I saw a girl with a telescope。参加者が好きに組み直していいとか。
砂山さん、永田さんが参加するgh/eは「LOEWE展2013」での
4D ORIGAMIが記憶に新しいが、どのように展開していくのか楽しみ

I saw a girl with a telescope(部分)
なんらかのデータを半田ごてを応用したもので熱でスチロールを溶かして形成している

この他、大阪万博の「お祭り広場」をはじめ、磯崎さんがこれまで手がけてきたプロジェクトの数々を紹介しています。「東京都新都庁舎」は1986年に実施されたコンペに磯崎新アトリエとして提案したもの。高層建築とする都側の条件に対して真っ向から中層建築として提案しており、都市の核となるシティホールとしての提案は単なる建築に留まらない都市の問題に挑戦しています。ご存知のように都庁舎には丹下健三案が採用されましたが、僕はいまだに磯崎案が都庁になっていたら、東京の表情は大きく変わったと考えています。

「海市=ミラージュシティ」は1994年に中国・珠海市からの依頼により、中国の経済特区のひとつとしてマカオ沖に人工島をつくり、そこに文化、学術、会議、居住といった施設を計画していたもの。海市には海上都市と中国語で蜃気楼の二重の意味がありますが、まさに海市のプロジェクトは蜃気楼のごとく消え去りました。


1986年に実施された東京都新都庁舎コンペに提案された磯崎新アトリエ案
「海市」の展示

「海市」展では「プロトタイプ、シグネチャーズ、ヴィジターズ、インターネットの<しまじま>が生成されました」と語る磯崎さんは「<しまじま>がギャラクシーに成長しつつある現在、『惑星ソラリス』を参照しながら,集合知,免疫性(イムニタス)などを都市論として討議する場をつくりだしたい」としています。

ここでなぜソラリスなんでしょう? 「惑星ソラリス」は知的生命体としての海を持つソラリスと人類の関わりを描いたもので、1961年にSF作家スタニスワフ・レムが発表したSF小説「ソラリスの陽のもとに」であり、1972年に公開されたアンドレイ・タルコフスキー監督の名を知らしめたSF映画の金字塔「惑星ソラリス」を指しています。レムのソラリスは知性を持つ巨大な存在であるソラリスと人類がコミュニケーションを図ろうとする事に物語の主軸が置かれていますが、タルコフスキーの映画では主人公の心理学者クリスの記憶から、ソラリスが実体化させたかつての自殺した妻ハリーとの人間関係に重きを置いています。公開当時、その難解な映像表現もあってか、原作との乖離のあるタルコフスキーの映画はSFファンからはあまり受け入れられませんでした。

今回、そのソラリスを参照して討議を行うという事ですが、それが一体どういう事を意味するのか大変興味をそそられます。知性を持つ巨大な存在=集合知とも読めるし、ソーシャルネットワークはすでに存在しない存在を(データを抹消させない限り)仮想的に存在させてしまう事を実現しています。いずれにせよ、都市に住まい、働く人々と、都市という巨大な存在がどのようにコミュニケーションを取り、どのような未来を形作っていくのか、本展で垣間みられることを期待しています。

この機会に「惑星ソラリス」を見直してみるのもいいかもしれないな、と思ったら、なんとリマスターされた映像がBlu-ray版として4月にリリースされたばかりとか。以前、DVDで見た時はあまりのノイズに見る気がしなくなったのですが、今度はかなりよさそうです。リマスターのDVDも出ているようなので、本展に行く前に「惑星ソラリス」。いいかもしれませんよ。





「磯崎新 都市ソラリス」展
会期:2013年12月14日(土)〜2014年3月2日(日)
会場:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC] ギャラリーA
開館時間:午前11時—午後6時(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(月曜が祝日の場合翌日),年末年始(12/28—1/3)ほか
入場料:一般・大学生500円/高校生以下無料
主催:NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]
協力:株式会社磯崎新アトリエ,株式会社イソザキ・アオキ アンド アソシエイツ,MISA SHIN GALLERY,東京藝術大学 芸術情報センター

問い合わせ:フリーダイヤル 0120-144199


  


2013年12月11日

美術館体験を大きく変える? クリーブランド美術館の試み

巨大な美術館に行くと、膨大な量の作品群に圧倒され、なにがなんだかわからないけど、とにかくスゴかったという感想しか生まれず、折角の知的体験の場に足を運びながら、棒のようになった足を引きずって帰路についている自分に気づく、なんてことありませんか? 自分が知らなかった新しい世界の窓となりえる美術館や博物館の本来の魅力に気づかずに帰ってしまうような事があったら、こんな勿体ない事はないと思います。


そんな美術館体験を大きく変える試みがアメリカ合衆国オハイオ州にあるクリーブランド美術館ではじまっているようです。


クリーブランド美術館は1913年に開館(公式には1916年)した100年の歴史を持つ美術館で、収蔵点数は70,000点、展示室数は70を超える、全米屈指の規模と質を誇る美術館です。とりわけ日本美術コレクションは古代から江戸、近代にまでおよび、ボストン美術館やメトロポリタン美術館といった著名な日本美術コレクションに匹敵する名コレクションです。同館では2006年に大規模なリノベーションを行い、続いて2008年より増築を行っており、2013年1月にインタラクティブ機能を備えた「ギャラリーワン」がオープンしました。







このギャラリーワンではデジタル・インタラクティブを活用したさまざまなデバイスが来館者の新しい美術館体験をサポートしています。展示室に設置されたイーゼルを模した大型ディスプレイはユニークです。収蔵されている彫刻などの立体作品の形にあわせ、来館者が同じポーズを取る事ができ、その写真をソーシャルメディアにリンクさせる事もできるようです。

圧巻は12メートルもある「コレクション・ウォール」です。巨大なマルチタッチスクリーンに常設コレクションから3,500点以上の作品画像がタイル状に表示され、そこにタッチすると直感的に作品が検索できます。来館者は数多くの作品の中から気になった作品を選んで、自分だけのアートツアーを作ることができます。さらに持参したiPadや美術館で貸し出しているiPadをウォールにドッキングさせる事で、選択した作品やアートツアーのデータを持ち運ぶ事ができます。これに同館が独自に開発したiPadアプリケーション「ARTLENS」を使う事で、来館者は館内の常設コレクションの実物がどこにあるかわかったり、作品にiPadをかざしてAR機能により作品データを作品とともに閲覧できます。

2010年に行われた第13回文化庁メディア芸術祭でコンセプトを提案させていただき、実際に会期中に運用されたiPhoneアプリケーション「JMAF navi」(現在は削除)は、会場内での来館者の位置にあわせてその場にある作品を紹介するというものでしたが、最終的にはまさにこういう事がやりたかったのでした。


iPadアプリケーション「ARTLENS」


インタラクティブ技術による新しい美術館体験はどんなアートとの新しい出会いをもたらすのでしょうか? ぜひ一度、クリーブランド美術館に行って体験してみたいものです。ところで、オハイオに行く前に、前述したクリーブランド美術館の日本美術の名コレクションが日本でも楽しめる展覧会がやってきます。


来春、2014年1月15日(水)より東京国立博物館(東京・上野)において開催される『クリーブランド美術館展─名画でたどる日本の美』です。クリーブランド美術館では、ギャラリーワンに続き、2013年6月に新たに日本ギャラリーをオープンしています。本展はこれを記念して開催されるもので、同館のコレクションより、平安から明治にいたる選りすぐりの日本絵画約40点に、西洋絵画などの優品を加えた総数約50点を紹介します。

本展は日本美術独特の4つのテーマで構成されており、第一章「神・仏・人」は仏画や肖像画などの人体表現、第二章「花鳥風月」は咲き誇る花々や鳥たちをあらわした花鳥画、第三章「山水」は名所や胸中の理想の風景を描いた山水画、そして第四章「物語世界」は日本の絵画が「人」と「自然」をどのように表現してきたかをたどります。


『雷神図屏風』「伊年」印 江戸時代・17世紀 クリーブランド美術館蔵
Photography © The Cleveland Museum of Art
Andrew R. and Martha Holden Jennings Fund 2004.86

『龍虎図屛風』雪村周継筆 室町時代・16世紀 クリーブランド美術館蔵
Photography © The Cleveland Museum of Art
Purchase from the J. H. Wade Fund 1959.136.1-2

『蔦の細道図屛風』深江蘆舟筆 江戸時代・18世紀 クリーブランド美術館蔵
Photography © The Cleveland Museum of Art
John L. Severance Fund 1954.12

日本にクリーブランド美術館から日本美術コレクションがやってくるのにあわせ、クリーブランド美術館では2014年2月16日〜5月11日に東京国立博物館所蔵の日本美術の名品による特別展「伝統の再生-日本近代美術」が開催されるそうです。


クリーブランド美術館展ー名画でたどる日本の美

会期:2014年1月15日(水)〜 2月23日(日)
開館時間:午前9時30分〜午後5時 ※入館は閉館の30分前まで
会場:東京国立博物館
休館日:月曜日
主催:東京国立博物館、クリーブランド美術館、
NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
協賛:日本写真印刷
協力:全日本空輸

「クリーブランド美術館展」観覧料
一般:1,000円、大学生:800円、高校生:600円
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)