2019年11月12日

石を積み続けて宮殿を造り上げ、娘への愛を形にした男『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』


たったひとりでつくった石積みの宮殿

郵便配達員がたったひとりで宮殿を造ったという御伽噺のような話を耳にしたことがありませんか? それは御伽噺でも作り話でもなく、フランスのリヨン郊外に実在する石積みの宮殿のことです。

郵便配達員のシュヴァルはある日、つまづいた奇妙な形の石に魅せられ、33年もの歳月をかけて、膨大な量の石を積み上げ、奇想の宮殿を造りあげます。

彼を途方もない偉業に駆り立てたのは、芸術的な欲求でも、名声のためでもありません。


愛を表現することが苦手な不器用な男が、心から愛する娘・アリスのためにひたすらに造り上げたものなのです。本作はシュヴァルの家族への愛の物語です。

シュヴァルは不幸なこともあったけど、幸せでひっそりとした人生を送った人。
こうした生き方の方がどれだけ人間的だろう。思わず自分の生き方を振り返ってしまいました。

彼が成し遂げた偉業と家族愛を描いた『シュヴァルの理想宮』は12月13日に公開されます。監督はあのベルトラン・タヴェルニエ監督の息子で俳優のニルス・タヴェルニエ監督。

cheval-movie.com



ここからネタバレがありますので、ご注意ください。

フランスの文化財へ

33年の歳月をかけて理想宮を完成させたシュバルは次に霊廟(お墓)の制作に取り掛かっています。それははじめ理想宮を、幼くして亡くなった娘のアリスを葬りたい、との希望が村や教会からゆるされなかったため、その後、次々と息子、妻と家族を亡くしたシュバルは、村の共同墓地に家族を葬るための霊廟「終わりなき沈黙と休息の墓」を9年かけて造り上げました。

劇中にも出てきますが、製作中から世界中から見学に訪れる人がいました。それはたぶん息子のアイディアで作った絵葉書の効果もあったのでしょう。完成後も見学者が訪れ、シュバルのこの世を去る前にはパブロ・ピカソやアンドレ・ブルトンも彼の名を知ることになりました。

1969年には当時のフランス政府文化大臣のアンドレ・マルローにより理想宮は文化財に登録され、いまでも当地を訪れる人は絶えないそうです。



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