2022年11月5日

【TIFF2022】「生まれ変わっても、あなたに逢いたい」時空を超える愛の物語:『月の満ち欠け』


東京国際映画祭の参加作品で、12月公開予定の『月の満ち欠け』を観ました。


劇中、1980年12月8日が重要な日として位置づけられています。ある一定の年齢層の方やディープな音楽ファンの方なら、ピンときたでしょう。ジョン・レノンがダコタ・ハウスで凶弾に倒れた日、彼の命日です。その日を印象づけるものとして「Woman」が劇中で使われています






これにはやられてしまいました。


本作は直木賞作家・佐藤正午の最高傑作と名高い、緊計発行部数56万部を超えるベストセラー小説「月の満ち欠け」を、名匠・廣木隆一監督が実写化した作品です。【愛し合っていた一組の夫婦】と【許されざる恋に落ちた恋人たち】、二組の男女の運命を「生まれ変わっても、あなたに逢いたい」という強い想いにより、時空を超えた奇跡を起こします。


あらすじはこんな感じです。


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物語の鍵を握る謎めいた女性・正木瑠理(演:有村架純)と正木瑠璃と許されざる恋に落ちる大学生・三角哲彦(演:目黒蓮[Snow Man)が出会う。瑠璃には竜之介(演:田中圭)という夫がいたが、彼は子どもを産めない体の瑠璃を罵る。三角からの強い想いと竜之介の仕打ちに耐えかね、瑠璃は家を出るが、追ってくる竜之介から逃れようと電車が近づく踏切に立ち入ってしまう。

それから27年後。仕事も順調、幸せな家庭をもっていた小山内堅(演:大泉洋)は、不慮の事故から最愛の妻・梢(演:柴咲コオ)と娘・瑠璃(演:菊池日菜子)を亡くし、深い悲しみから東京での生活を捨て、青森でひっそり暮らしている。その小山内の前に三角哲彦が現れ、二人が事故に遭った日、娘・瑠璃が面識のないはずの自分に会いに来ようとしていた。彼女はかつて自分が愛した正木瑠璃という女性の生まれ変わりだったのではないか、と告げる。

輪廻転生によるものか、娘・瑠璃は正木瑠璃の記憶を持ってこの世に生を受けていた。そんな信じがたい事実を受け入れられない小山内にはラストにもうひとつの「想い」が…

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正木瑠璃と三角哲彦が出会うのが1980年12月8日の高田馬場にある雨のレコードショップの前でした。ふたりが会う場所として1980年の高田馬場が描かれているのですが、駅前にあった甘栗太郎や芳林堂書店も再現されていて、当時をよく知るものとしては、もうそれだけで…


佐藤正午は「永遠の1/2」以降は手にしたことのない作家でしたが、今回、久々に原作を読んでみました。さすがに同年代だけにいろいろとエモい描写も多く、また、若い人たちの間にある、ちょっとホラーと感じる設定も、年を重ねてきたものとして、永遠の別れをしてしまった人とまた会いたいという想いは、同じように思ってしまうだろうな、と。


単純に泣ける、感動する、だけではなく、自分が小山内だったらどうだろう。三角だったらどうだろう、と。自分の人生や家族のことを思ってしまう作品です。




映画『月の満ち欠け』公式 https://movies.shochiku.co.jp/tsuki-michikake/


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追記(2023年1月8日)

東京国際映画祭の参加作品として映画祭で公開直後にマスコミ試写で拝見しましたが、1980年、ジョンレノン、高田馬場など、エモい要素が多すぎて。

さらに、僕にも1980年前後に三角哲彦と似たような経験があったので、余計にリアルに感じてしまい、ちょっとじっくり考えることができず、しっくりこないままに感想をまとめてしまいました。

そんなもやもやしたものもあり、あらためて年始に劇場で再見しました。
僕は個人的には輪廻転生はあると信じています。しかし、それは命が永遠に続いていくものだというもので、人が人に生まれ変わるのではなく、宇宙全体を包む大きな生命の中に帰っていき、また異なる生命体に入っていく、という感じではないかと思っています。

今回の話は愛の話であり、その究極の形として、命の違いをも超えて行く、というもので感動的な話ではあるのですが、よくよく考えてみると、正木瑠璃の想いは別の人生を生きる人々の人生にも影響を及ぼしているわけで、これほどエゴイスティックなことはないのではないかと。

正木瑠璃の想いは感動的であると同時に、情念すら感じる強い想いをホラーと感じてしまうのは宜なるかなと。結論として、他者に強い影響を与えてでも、自分の想いを遂げようとするこの設定は、僕には受け入れがたいものがあると考えを改めた次第です。

しかし、それだけに、もう一度観たくなるほどの映画であることには間違いありません。




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