2013年11月7日

アップル新社屋をデザイン。              ノーマン・フォスター卿のドキュメンタリー公開に

モダニズムのモーツァルト、ロンドンをガラスの都市に変えた建築家。いずれもイギリスの建築家、ノーマン・フォスター卿に冠されたものです。78才で世界を飛び回るフォスター卿がいま手がけているのは、世界が忘れる事ができない地に立つTwo World Trade Center、そしてアップルが本拠地のクパチーノに建設を予定している新社屋、Apple Campus2でしょう。

大切なのは、物としての建物ではない。
私の死後も残る哲学がないと。
未来へと続く、生きた哲学のデザイン。
それが何より難しいし、実現出来たら誇らしい。
ノーマン・フォスター

ドイツ連邦議会新議事堂・屋上ドーム(1992年修復完了)

フォスターのドローイング


この最も注目されている建築家のひとり、ノーマン・フォスターの建築人生を追ったドキュメンタリー映画『フォスター卿の建築術』が、2014年1月3日より渋谷アップリンクにおいて、さらに順次全国公開されることになりました。


ドキュメンタリー「フォスター卿の建築術」は2014年1月3日公開


世界貿易センタービルの跡地に建設されるTwo World Trade Center(2015年完成予定)

フォスターが手がけるApple Campus2。カリフォルニア州クパチーノ市議会で上映されたプレゼン動画で、スティーブ・ジョブズから「ノーマン、手伝ってほしい事があるんだ、といわれその3週間後に現地を訪れた」と依頼があったことを披露。「最初から円形の建物を考えていたのではなく、だんだんそうなっていった。いくつもモデルを作り、何度もプレゼンを重ねる中で生まれたものだ。その徹底したプロセスは今も続いている」と語っており、徹底した論議を重ね、正解を見い出していくジョブズらしいプロセスがフォスターとの間にもあった事がうかがわれます。当初は2015年には完成の予定でしたが、より完成度を高めるために、現在は2014年度の着工を目指しているとか。ちなみに、残念ながら本作ではApple Campus 2は登場しません。


Apple Campus2の完成予想図

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フォスターで僕が最初に思い浮かぶのは、やっぱり出世作の香港上海銀行・香港本店ビル。これは超高層ビルを太い鋼鉄フレームで支える構造が剥き出しになった、いわゆるハイテク建築と言われるもので、当時はフォスターと共に事務所を構えたリチャード・ロジャース(ロンドンのミレニアムドーム、日本テレビ放送網汐留本社など)、レンゾ・ピアノ(関西国際空港ターミナルビル、メゾンエルメス銀座など)とともに、ハイテク建築御三家として世界に知られる事になります。

香港上海銀行・香港本店ビル(1985年竣工)


その後、彼が手がけた東京・御茶の水に立つセンチュリータワーは香港上海銀行ビル同様、構造をファサードに露出させたものでありながら、それそのものは装飾的、様式的でポストモダンに近いものであったと思います。以降、フォスターの手がける建築は、ドイツ・フランクフルトのコメルツ銀行本店ビルや、MBFタワー(マレーシア・ペナン)やロンドン市庁舎ビル、さらにガーキンと呼ばれるスイス・リ本社ビル(ロンドン)のように、エコロジカルなものへと変化しました。


センチュリータワー(1991年竣工)

華やかな経歴に彩られているものの、2000年にロンドンに建設・開通したミレニアムブリッジは大きな横揺れの発生で3日後に閉鎖(2年後に再開通)されるという不名誉も受けています。


僕はフォスターを建築を通してしか知りえないわけで、フォスターがハイテク建築からポストモダン、そして最新のモダニズムへと変遷したその理由、それを支えてきた建築哲学に触れることができるかと思うと、いまから公開が待ち遠しいです。本作ではバックミンスター・フラーとの会話や、リチャード・ロジャース、リチャード・ロング、蔡國強、U2ボノといったフォスターに関わりの深い人々へのインタビューもあり、これもまた楽しみです。

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Apple Campus 2:
宇宙船を思わせる巨大な円形の特徴的なデザインと、2011年当時にクパチーノ市議会への提示をスティーブ・ジョブズみずから行い、ジョブズの肝いりで進められていた事から、大いに話題になりました。ヒューレット・パッカード社から取得した98エーカーを含む150エーカーの土地に建設されるもので、中庭を円で囲むように曲面ガラスで構成された4階建の建物。1万3000人の従業員が勤務し、3000人収容可能なホールも用意されるそうです。自家発電施設も建設され、100を超える電気自動車のチャージング・ステーション、果樹園を含む6000以上もの木が植えられる、フォスターが手がけるだけに、エコロジカルな発想も盛りだくさんな次世代のオフィスとなりそうです。



クパチーノ市議会でのスティーブ・ジョブズのプレゼンテーション


映画『フォスター卿の建築術』
2014年1月3日(金)より渋谷アップリンクほか全国順次公開

監督:ノルベルト・ロペス・アマド&カルロス・カルカス 
出演:ノーマン・フォスター、バックミンスター・フラー、リチャード・ロジャース、リチャード・ロング、他(イギリス/2010年/英語/74分)
配給:アップリンク


    

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