2019年2月15日

山口さんならではのユニークさで能楽堂が美術館に/ 山口晃「昼ぬ修羅」:横浜能楽堂

能楽堂の客席を使ったインスタレーションと山口晃さん

日本画の手法と現代的なモチーフを用いて、ユーモアのある独自の世界観を展開して人気の現代美術家・山口晃さん。おもわぬ場所で展覧会が行われることがあって驚かされますが、今回も展覧会をここで?、という場所。

以前、山口さんが描くことの多い馬と鉄の馬(オートバイ)をテーマに、横浜にある「馬の博物館」で展覧会が行われたことがありましたが、今回は同じ横浜。馬の博物館にも近い横浜能楽堂で『横浜能楽堂特別展 山口晃「昼ぬ修羅」』展が開催されています。

椅子ごとに一組の弓が
奥の席の弓も
二階の窓にも注目

横浜能楽堂企画公演「風雅と無常ー修羅能の世界」に併せ、「修羅」をテーマに絵画やインスタレーションを展示しています。修羅能とは修羅物とも言われる、能の演目の中で武人がシテになる曲で、多くは源平の武将たちが主人公となる合戦を描いています。

本展では山口さんがこれまで源頼朝を題材とした《洞穴の頼朝》や、中世の武将を描いた《落馬》といった作品を描いてきたことに着目し、能楽堂においてインスタレーションを展示、二階の展示廊では絵画を中心に展示を行っています。

特筆すべきは能楽堂の客席全体で行われているインスタレーションです。客席のひとつづつに弓が据えられており、全体で見ると、その景色はまるで青海波の紋様。これは見ものです。

山口晃の写真
山口さんの絵画作品とともに不可思議なものが飾られた二階の展示廊。
能面や榊、桶、ポット? いずれも能楽堂の収蔵庫から山口さんが引っ張り出してきたものとか。
山口晃の写真
中央は《洞穴の頼朝》(1990)
山口晃の写真
左は《當卋おばか合戦ーおばか軍本陣圖》(2001)高橋コレクション所蔵

ここでネタバラシをしてしまうと楽しみが減ってしまうので、あえてお伝えしませんが、これも作品なの?と首を傾げつつ、山口さんの遊び心とそれをしなやかに受け止めて展示を行った横浜能楽堂の姿勢に、思わずニヤリとしてしまいます。ヒントは1階のロビーのすみと2階の休憩室です。ぜひ探してみてください。

横浜能楽堂の写真
横浜能楽堂。
JR桜木町駅から徒歩15分程度ですが、往路はかなりの急勾配の坂道があります。



なお、本展は入場無料ですが、本舞台公演時にはチケットをお持ちの方のみ入場できますので、ご注意ください。詳細は横浜能楽堂の公式サイトでご確認ください。

  横浜能楽堂特別展 山口晃「昼ぬ修羅」
  会期:2019年1月19日(土)~3月23日(土)※休館日あり
  会場:横浜能楽堂
  公式サイト http://ynt.yafjp.org