2019年2月16日

今秋、三十六歌仙が京都で百年ぶりの再会/『特別展 流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美』京都国立博物館

現時点で三十六歌仙のうち28件の断簡の展示が決定。
京博では全件の展示を目指して、現在も出展の交渉中とのこと

今秋、京都国立博物館で開催される『特別展 流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美』の記者発表会が東京国立博物館で行われました。会期は2019年10月12日(土)〜11月24日(日)。《佐竹本三十六歌仙絵》は柿本人麻呂や小野小町といった三十六人の優れた和歌の読み人「歌仙」を描いた鎌倉時代の名品。旧秋田藩主・佐竹公爵家に伝わったことから、「佐竹本」と呼ばれ、三十六歌仙絵の最高傑作とされています。

《佐竹本三十六歌仙絵》模本。東京国立博物館内の応挙館で撮影


二巻の絵巻物として伝わってきたこの作品でしたが、いまからちょうど百年前の大正8年(1919年)に一歌仙ずつに分割され、別々の所有者の手に渡り、ちりぢりになってしまいます。当時の社会情勢から佐竹家から実業家の手に渡りますが、ここから再び売りに出されます。しかし、あまりの高額に誰も手を出せず、海外流出の恐れもあったことから、経済界の重鎮で茶人・鈍翁こと益田孝さんらが発起人となり、共同で購入することになります。


《佐竹本三十六歌仙絵》模本(部分)より「坂上是則」 東京国立博物館内の応挙館で撮影
現物の重要文化財《佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則》は文化庁所蔵
《佐竹本三十六歌仙絵》模本(部分)より「小大君」 東京国立博物館内の応挙館で撮影
現物の重要文化財《佐竹本三十六歌仙絵 小大君》は奈良・大和文華館所蔵

呼びかけに応じて、当時、品川・御殿山にあった応挙館(円山応挙が描いた障壁画がることからこう呼ばれる。現在は東京国立博物館に移設)に財界人や美術商が集まりました。

そうして、三十六歌仙の36枚に《住吉大明神》を加えた37枚に分割され(切断ではなくもともと一枚づつ描かれ糊でつないでいたものを分割した)、くじ引きによりそれぞれが所蔵するという、まさに日本美術史上の大事件が起こりました。

『特別展 流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美』は2019年10月12日から。
会期は38日間、巡回はなし。京博以外での開催の予定はありません。

今回、その離れ離れになった37枚の断簡のうち、28件が100年ぶりに京都国立博物館に集結します。実は記者発表会の前に制作されたプレスリリースには27件とあるのですが、その後、1件の出展許可を得て28件となったそうです。現在も残り9件についても調査、出展交渉が続けられており、全件37枚の展示を目標に努力を続けているとのこと。

出展が決まっていない9件のうち、《柿本人麻呂》と《僧正遍昭》の2件は出光美術館、残り7件は個人蔵となっており、全件集結はなかなか難しいところかと思いますが、ぜひこの秋には百年ぶりの再会を喜ぶ三十六歌仙の姿を目にしたいものです。

本展は会期38日、京都限定の展覧会となります。秋の京都の大きな楽しみのひとつとなりそうです。

ノベルティでいただいた京都・松榮堂の「香りのしおり」
栞にしたり、手紙に添えたり、名刺入れに入れておけば、ほのかに香る名刺になります。
非売品ということですが、六歌仙の絵入りのものがあったら、ミュージアムグッズとして人気が出そう

  『特別展 流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美』
  会期:2019年10月12日(土)〜11月24日(日)
  会場:京都国立博物館(京都)
  公式サイト:https://kasen2019.jp

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