2020年1月21日

ハマスホイの静謐な世界に浸る至福。:『ハマスホイとデンマーク絵画』東京都美術館

《背を向けた若い女性のいる室内》ヴィルヘルム・ハマスホイ

北欧のフェルメール、ハマスホイ


19世紀末デンマークの巨匠、北欧のフェルメールとも称されるヴィルヘルム・ハマスホイと19世紀デンマーク絵画を集めた『ハマスホイとデンマーク絵画』展が2020年1月21日(火)から東京都美術館で開催されています。


『ハマスホイとデンマーク絵画』展は1月21日より東京都美術館で

北欧の柔らかな光が差し込む静謐な空気に包まれた室内、そこにたたずむ女性のうしろ姿。おさえられた色彩、繊細な光が差し込む、美しく調和したミニマルな空間。洗練されたモダンな作品世界。

本展ではキーヴィジュアルとなっているハマスホイの《背を向けた若い女性のいる室内》をはじめ、日本初公開を含む40点を展示しています。


《室内》ヴィルヘルム・ハマスホイ
《室内、ラーベクス・アリ》ヴィルヘルム・ハマスホイ

《ライラの風景》ヴィルヘルム・ハマスホイ

《農場の家屋、レスネス》ヴィルヘルム・ハマスホイ

ハマスホイの絵の中ような展示


展覧会後半の展示室はそうしたハマスホイの描いた世界観と展示会場のつくりがシンクロしてて、まるでハマスホイの絵の中にいるかのように錯覚しそうです。


展示「4 ヴィルヘルム・ハマスホイー首都の静寂の中で」のエントランス

《室内―開いた扉、ストランゲーゼ30番地》ヴィルヘルム・ハマスホイ

展示「4 ヴィルヘルム・ハマスホイ―首都の静寂の中で」の展示室内

《室内ー陽光習作、ストランゲーゼ30番地》ヴィルヘルム・ハマスホイ


極度の物語性を排除し、ともすれば空虚とも感じる独特なスタイルのハマスホイの画風はデンマーク絵画の中にあって、どのような存在なのでしょう?

はじめて出会う19世紀デンマーク美術


それを知るには19世紀デンマークの美術を見ていかなければならないわけですが、本展の前半ではそうした近代デンマークの絵画を時代に沿って、三部構成で紹介しています。


1 日常礼賛―デンマーク絵画の黄金期
1754年に設立された王立美術アカデミーを中心に、コペンハーゲンの風景や市民たちを描いた抽象画などデンマーク的な完成度の高い作品が制作された1800年〜1864年の『黄金期』を作品を展示しています。


クレステン・グプゲ《パン屋の傍らの中庭、カステレズ》
「デンマーク絵画の黄金期」を代表する画家

2 スケーイン派と北欧の光
デンマーク的な作品とは対象的に首都から離れ未開の地と同然だったユラン半島北端の漁師町スケーインで、その厳しい自然環境とそこで働き、暮らす漁師たちの「プリミティブなデンマーク」に題材を見出したスケーイン派の絵画にフォーカスしています。

《スケーインの海に漕ぎ出すボート》オスカル・ビュルク

《朝食ー画家とその妻マリーイ、作家のオト・ベンソン》ピーザ・スィヴェリーン・クロイア

3 19世紀末のデンマーク絵画ー国際化と室内画の隆盛
1870年代、印象派に刺激を受けた学生たちが、旧態依然とした王立美術アカデミーに反発したことを発端に組織された「独立展」は若手の作品発表の場となり、ゴッホやゴーギャンを紹介するなど、デンマーク美術の国際化に寄与します。


絵の中に描かれたヒュゲな暮らし


1880年代以降は室内を主題に描いた「幸福な家庭生活」のイメージから「親密さ」がデンマーク絵画の特徴のひとつとなっていき、ヴィゴ・ヨハンスンをはじめ、“幸福の国” デンマークならではのヒュゲ(hygge:くつろいだ、心地よい雰囲気)を感じさせる作品が描かれました

《きよしこの夜》ヴィゴ・ヨハンスン

しかし、デンマーク絵画の「親密さ」は20世紀が近づくにつれ、物語性の希薄な室内画が顕著となり、居間や寝室は生活の場ではなく美的空間と捉えられ、室内画は変容していきます。その先鋭的な画家がハマスホイというわけです。

《ピアノに向かう少女》はハマスホイの義兄であるイステルズの作品ですが、美的空間として描かれた室内ではあるものの、少女の存在や明るい色調など、ハマスホイの作風に比べて親しみがあります。



《ピアノに向かう少女》ピーダ・イステルズ
こうしてみてくると、やはりハマスホイの存在はデンマーク絵画の中にあっても、独特な存在であるようです。禁欲的なまでのハマスホイの作風はどのようにして形作られたのか、興味は尽きません。


マグネットはミュージアムグッズの定番ですが、台紙部分とあわせてデザインされていて、
台紙のまま冷蔵庫にならべて飾りたくなります
お菓子のパッケージもなんとも洒落たつくりです
これ、展示作品ではありません。白いフレームの中に飾られたクリアファイルなんです!

並べられたミュージアムグッズはシンプルで落ち着いた感じのものばかり。おみやげというよりは普段使いできそう。ミュージアムショップの店内はグレーなトーンに統一され、ハマスホイの世界観はミュージアムショップにも。


展示会場の雰囲気をそのままにしたミュージアムショップ

『ハマスホイとデンマーク絵画』
会期:2020年1月21日(火)〜3月26日(木)
会場:東京都美術館
https://artexhibition.jp/denmark2020/

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#北欧のフェルメール