2013年8月27日

食とアートの「東北レストラン鉄道」


JR東日本の『TOHOKU EMOTION』ってプロジェクト、なんだか知れば知るほど、スゴい。ってか、こういうのをやりたいと思ってます。食とアートと旅って、僕の好きな要素が全部詰まってます。

TOHOKU EMOTIONは、東北の伝統工芸をインテリアのモチーフとした特別仕立てのレストラン列車です。タネ車はキハ110系の3両編成で、東北各地のローカル路線で活躍している気動車です。車内はレストランをそのまま再現したような作りで、1号車はコンパートメント個室、2号車はライブキッチン、3号車はオープンダイニングという構成です。




この特別な空間から、八戸〜久慈間の北三陸の美しい景色を楽しみながら、東北の食材に舌鼓を打つという、これまでにない趣向の列車です。久慈といったら、大人気の「あまちゃん」のロケ地(劇中では北三陸市)。ウニ、アワビといった海の幸はもちろん、いわて短角牛の産地もすぐそばです。2013年10月から2014年3月まで不定期運行されます。

ところでこのプロジェクトのメンバーがすごいです。

専用列車のエクステリア・デザインが奥山清行(僕的にはヤンマーのデザインは残念でしたが)さんとか、音楽は半沢武志(FreeTEMPO!)さんで、グラフィック・デザインはタイクーン・グラフィックス

何と言っても、アート・インスタレーションを十和田市現代美術館のキュレーションにより光のアーティスト、高橋匡太さんが務めているそうです。列車内という限られた空間でどのようなインスタレーションを見せてくれるのか楽しみ。

肝心の食の方は銀座アロマフレスカの原田慎次さんとの事。東北の地の食材でどんなイタリアンが楽しめるんでしょうか? 八戸駅発着の往路ランチコースが7,000円、復路デザートブッフェが4,000円、ランチ・デザートブッフェともに楽しめる往復利用だと割安の10,600円。都内発の新幹線利用の往復コースだと25,800円〜です。

考えれば考えるほど行ってみたい。

2012年12月3日

ユ、ユニコーン! ビスト邸にあったあのタピスリー『貴婦人と一角獣』が来春来日


機動戦士ガンダムUC[ユニコーン]/0096/Sect.1 ユニコーンの日」において、バナージ・リンクスがメガラニカの居住区にあったビスト家屋敷でカーディアス・ビストに邂逅する際、屋敷の豪奢な広間に飾られてあった一角獣を描いたタピスリーは実在します。



そのタピスリーは西暦1500年に制作された6面の連作『貴婦人と一角獣』で、パリ6区にあるフランス国立クリュニー中世美術館が所蔵しています。この「貴婦人と一角獣」が1974年にメトロポリタン美術館に貸し出されて以来、史上二度目のフランス国外での公開となります。

見事な千花模様(ミルフルール)に貴婦人、一角獣、獅子を中心にさまざまな動物が描かれた大作である同作品は、「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」の五感を表現した5枚と謎に包まれた「我が唯一の望みに」の6作からなっており、今回、この6面すべてがやってきます。さらに関連する彫刻や装身具、ステンドグラスなど、所蔵館の珠玉のコレクション40点が同時に公開されます。

ジョルジュ・サンドが賛美したことで広く知られる存在となったこのタピスリーは、作者不明なのですが、この地の有力者、Jean Le Viste(ジャン・ル・ヴィスト)が娘の婚儀の祝いの品として作らせたものだそうで、不明とされる「我が唯一の望みに」は「愛」や「結婚」を意味しているとされています。

獰猛なユニコーンを大人しくさせられるのは処女だけと言われており、こうした婚礼に関したものには、純潔の証としてユニコーンが描かれたりしているのかもしれませんね。そういう意味では、抑制の効かないバナージ=ユニコーンを抑えられ、救えるのはオードリー(=ミネバ)ってことなのか。

ところで、お気づきでしょうか? 制作依頼者の名前。まだまだいろいろとありそうだなぁ。

2013年4月24日から国立新美術館(東京・六本木)、7月27日から国立国際美術館(大阪・中之島)と巡回します。


2012年11月4日

おもしろいけど、なんだかなぁ。TOKYO DESIGNERS WEEK2012


今年も絵画館前で開催されたTOKYO DESIGNERS WEEK
先週今週はほんとにアート系、デザイン系のイベントが目白押しで参りました。とりわけこの時期にもっと注目されるのが『TOKYO DESIGNERS WEEK2012』なわけですが、今年もおもしろかったのは「学校作品展」。荒削りで完成度は低いんだけど、見てて楽しい。作っている側も楽しんでいそう。ラップで作ったハウスに学生がラップで作った帽子をかぶっているとか、木や竹で作った打楽器のような構造物に入って叩いて遊ぶとか、ボールで満たされた空豆のような形のハウスの中で遊ぶとか、特に外のエリアでの遊具っぽい作品が楽しめました。


目玉となった「伊藤若冲感性インスパイア作品展」は著名な作家が居並ぶ贅沢な展覧会ですが、いかんせん詰め込み過ぎの感が。「まぁ、これも若冲っちゃ若冲だけどなぁ」と無理矢理納得しないとだめな作品もあり、なんだかなぁ、と。もっともテーマとは関係なく、WOWや森野和馬さん、河口洋一郎さんの作品も見られて、それはそれでよかったですね。チームラボの作品もらしい感じでよかったのですが、来場者が歩くたびに作品が揺れる(投影しているプロジェクターが揺れてる?)のはちょっとお粗末。それとやはり一点でもいいから若冲のオリジナルがないってのは、いくらなんでも無理あるんじゃあ、と。


揺れる若冲はチームラボの作品

友人の岡田智博さんプロデュースによる「Design Next」の取り組みは面白いと思いました。個々の作品には触れませんが、実にユニークなアプリやウェブサービスを紹介していて楽しい。スマホ全盛のこの時代にあって、ソフトウェアの存在はデザインにおいても無視できないものであり、Design Nestに限らず、企業ブースでもアプリやソフトウェアにフォーカスしているところもあって、もっともっと注目されなければならないと思います。そういう意味では、このキツキツのスペースはないじゃないの?という感じも。来年に大いに期待したいです。

全体的にはあまりに詰め込み過ぎ、なのにあまりにカテゴリ分けし過ぎの感もあり、全体を見渡すプロデュース、ディレクションが仕上がっていないと強く感じました。もっとも、本展そのものが、きちんとテーマを持たせたものではなく、アート、デザインのフリマのようなものと考えれば、楽しめるんだろうな、と。だとしたら、この入場料金は高いよなぁと。

プレスとして一言言わせていただくと、今年もまたこのイベントの運営事情がよくわからない。プレスの問い合わせ先もわからず、例年、プレスで取材させていただいているのに、まったく事前の案内がない。告知活動も十分とは言えず、せっかくの内容にも関わらず、気がつきゃ終わってしまったイベントありました。最終日のDesign Nextのカンファレンスもスケジュールがあって見られないし。

なんだかなぁ。

なお、フォトアルバムをFacebookで公開していますので、そちらもあわせてご覧ください。

2012年10月24日

涙を語る映像、涙を映す言葉〜「Tears」に寄せて


『Tears』の元動画があった「Nikon Brand Story」はニコンのTumblr!

僕たちはこの1年半、何度、涙を流しただろう? もしかすると人生の中でもっとも泣いた時期だったと振り返る人もいるかもしれない。それだけ、悲しくつらい季節を過ごしてきた。涙は、人の感情を隠しきれずにむき出しにしてしまう。だからこそ、真の涙は貴重なのだ。

ちょっと前にYou Tubeで『Tears』という動画を見つけた。さまざまな国で、さまざまな人々が、さまざまな場面で、さまざま理由から涙をながす姿を映像で綴っているものだ。3人の作家が描く涙の映像は、涙を流す人々のそれぞれのカットはわずか数秒でありながら物語に溢れ、ドキュメントなのかドラマなのかわからない映像が真に迫ってくる。これは9月にドイツで開催された写真・イメージング分野での世界最大の見本市、Photokina 2012でニコンが公開したものだ。

[光を映す涙]
スウェーデン出身でいまはロサンジェルスでコマーシャルやミュージックビデオ、映画といった分野で活躍するアダム・ファーシが描いたのは「光」。ウェディングドレスの白と眩しい海辺の光を反射する波、暑く乾いた砂漠に降り注ぐ強烈な太陽、暗闇に儚げなランプの灯り、木漏れ日、街の灯り、リビングに優しく降り注ぐ日差し……。さまざまな光が描き出されており、その光に注がれるまなざしが印象的だ。





[真に迫る涙]
ロンドン在住のシネマトグラファー、ローラ・ベリングハムの映像は人の表情、とりわけ涙する目にフォーカスしている。涙する人を、これでもかというほど近い距離でとらえ、その表情そして瞳に迫る。彼らの表情、涙する瞳にはそれぞれの人生が色濃く映し出され、まるでドキュメンタリーのようなその映像から感情が強く伝わってくる。




[物語る涙]
シンガポールの撮影監督・フォトグラファーのデヴィッド・リーの作品はまさに映画だ。僕は台湾や中国をはじめとしたアジアの映画にひとかたならぬ思い入れがあるのだが、アジアの映画の多くは、ことさらに誇張した舞台を用意する事もなく、普通の人々が送る生活だったり、なんでもない人生を描く映画が多い。この映像はまさにそうしたアジア映画のワンシーンを切り取ってきたような印象。まるでオムニバスの映画を見ているかのような味わいを感じる。




3人の作家の作品を観て気づかされたのは、涙は悲しい時だけに流すのではないということだ。喜怒哀楽、すべての感情に涙は流される。考えてみれば、僕はこの1年半、悲しい時にだけ流す涙にしか接してこなかったかもしれない。

この映像に描かれているような事で、僕も涙した経験があった。生まれくるいのちに涙し、子どもの旅立ちに涙した。尊敬する先輩のハッピーなリタイヤに涙し、古い友人に偶然出会ってお互いの無事に喜ん涙し、ただただ純粋に昇ってくる朝日に涙したり……。もっともっと、悲しいだけではないさまざまな場面で僕たちは涙してきたし、これからもそうあるはずだ。

3つの映像をひとつにまとめて編集したのがニコン ブランドストーリー「Tears」だ。『Tears』に描かれたさまざまな涙する表情、それぞれに添えられているのは一文字の漢字だ。
そうだった。日本にはこれほど豊かに涙する感情を表す、素晴らしい言葉があったのだ。



Nikon Brand Story

2012年9月17日

東京国立博物館 東洋館 リニューアル プレス公開

東京国立博物館 東洋館は2013年1月2日に新装開館します
このほど東京国立博物館 東洋館(東京・上野)が耐震改修工事を終え、報道関係者に公開されました。耐震補強と展示ケースなど展示デザインや照明などがリニューアルされた同館は今後、展示品の設置作業がすすめられ、来年2013年1月2日にリニューアルオープンします。1968年に開館した同館はアジアギャラリーと呼ばれ、中国・朝鮮半島・東南アジア・インド・エジプトなどの美術品を有する世界有数の東洋美術コレクションです。今回のリニューアルで掲げられた展示コンセプトは「東洋美術をめぐる旅」。アジア世界を網羅する充実のコレクションで極上の文化の旅が楽しめます。


同館は東京国立近代美術館などを手がけたモダニズムの建築家・谷口吉郎が設計によるもので、今回の改修工事ではオリジナルの設計デザインを継承する形で耐震補強が行われました。そのため、特徴的な中央の吹き抜け、ホール、開口部には耐震ブレースを設けない形となっており、中央吹き抜けにシースルーのエレベーターが設置されたのを除けば、改修前とそれほど変わらない印象になっています。


4Fから吹き抜け部分を見下ろす。階段の手すりは工事前と変わっていないのがわかります

中央吹き抜け部分にはエレベーターが新設されました


大きく変わったのは映り込みの少ない低反射ガラスを用いた展示ケースが新たに導入され、照明には蛍光灯に代わってLED照明が採用され、より美しく、見やすい展示となった各展示室のデザイン。例えば、3Fの「中国の青銅器」では大きな曲面ガラスの展示ケースが設けられ、「饕餮文瓿(とうてつもんほう)」などの中国古代文化の象徴である青銅器が展示されており、さまざまな角度から鑑賞できます。この他、展示品の性質や状況に応じて工夫された展示ケースが設置されており、展示方法からこれから展示される作品を創造するのも楽しいです。

なお、あくまで今回の公開は特別に一部作品が収められたサンプル展示の形となっており、今後、レイアウトや照明などの変更が行われる事もあるとの事です。来年2013年1月2日のリニューアルオープンの前後には、展示が完了した新生アジアギャラリーを改めてプレスに公開いただけるとの事ですので、その時は改めてより詳しくお伝えできると思います。

「如来三尊像」をはじめとした中国の仏像が展示された1Fの展示室

ガラスがあるようには見えないほど映り込みの少ない展示ケースに収められた古代中国の青銅器
奥から2番目の「饕餮文瓿」(殷時代・前13〜前11世紀 中国 坂本キク氏寄贈)などが並ぶ

照明は従来の蛍光灯からLED照明に変更されており、作品がより美しく鑑賞できます。
写真は『国宝 紅白芙蓉図』(李迪筆 南宋時代・慶元3年)

展示物がないのでわかりにくいのですが、天井高が通常の部屋の1.5倍はあり、
かなりの大きさの作品も展示できそうです

「中国文人の書斎」を再現し、書斎を飾る書画や文房具を紹介するための展示ケース。
机を置くスペースを確保するためにかなりの奥行きがとられています。
床もこのケースのみ石板が貼られています


この他、現在、資料館で運営されている「TNM&TOPPANミュージアムシアター」が300インチの大型スクリーン、高精細4Kプロジェクター、98席(全席収納式テーブル付)へと規模が拡大し、より充実した内容で新たにオープンします。バーチャルリアリティで再現された歴史的建造物などの映像を迫力のスクリーンで楽しめます。東京国立博物館東洋館は総合文化展観覧料(一般600円、大学生400円)で観覧できます。

東京国立博物館 東洋館 お問い合わせ 03-5777-8600(ハローダイヤル)

2012年8月18日

テレビがアートを変える? アートがテレビを変える!

アート番組と言われて思い出す番組ってなんでしょう? やっぱりNHK「日曜美術館」? それともテレビ東京の「美の巨人たち」? 実は僕はこのどちらもあまり見たことがありません。もちろん、興味のあるアーティストや展覧会が放送されるのがわかれば、チェックして見ますが、これだけアートが好きな僕でもどうにも退屈なのです。

よく言えば重厚な番組作りですが、なにか教育的というか、ナレーションもどこか上から目線っぽい。なによりテレビというお気軽なメディアにアートの空間がどうにも収まっていないように思うのです。そんな中、このところお気に入りで毎週のようにチェックしているのが、BS日テレで毎週火曜20時から放送されている『ぶらぶら美術・博物館』です。


『ぶらぶら美術・博物館」はBS日テレで毎週火曜20時に放送中


2012年8月2日

kobo touch。そんなに悪くないよ


いろいろと物議を醸している楽天の「Kobo touch」ですが(もっとも物議を醸しているのはkoboじゃなく、ふんぞりかえって「少数派の面倒はみないよ」みたいな事を言ってる三木谷さんの方ですけど……)、ウチでは意外に活躍してます。黒いkoboなので、そのコは「クロコボ」と呼ばれてます。もっとも、楽天のサービスを使う可能性がゼロのウチでは、活躍と言っても完全にビューワとしてですけど。


kobo touch。ウチではクロコボってよばれてます

2012年6月28日

さようなら、小美人・伊藤エミさん

ザ・ピーナッツのというより、僕にとっては「小美人」の伊藤エミさんがお亡くなりになりました。71歳だったそうです。

ホクロのある方が姉の伊藤エミさんですが、この画像ではわかりませんね。

2012年5月16日

2013年 第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展    日本代表作家が田中功起さんに決定

『A Whole Museum Could Be Used at Once』田中功起
2011 横浜美術館(「横浜トリエンナーレ 2011 OUR MAGIC HOUR」展示風景)
Courtesy of the Artiest, Vitamin Creative Space, Guangzhou and Aoyama Meguro, Tokyo
写真:チバヒデトシ

2013年開催の『第55回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展』における日本代表作家に田中功起さん、日本館キュレーター(コミッショナー改め)に東京国立近代美術館美術課長の蔵屋美香さんが決定したと主催の国際交流基金が発表(pdf)しました。

2012年5月2日

「テマヒマ展<東北の食と住>」で触れる、知られざる東北の手業 ー 21_21 DESIGN SIGHT

りんご選定鋏(左)、僕もこどもの頃はよく食べていた「凍み餅」(中)
21_21 DESIGN SIGHTエントランスの「テマヒマ展」バナー(右)

昨年7月、21_21 DESIGN SIGHTでは東日本大震災を受け、特別企画「東北の底力、心と光。『衣』、三宅一生。」を開催しました。東北の力を「衣」を通して見つめたすばらしい展覧会でした。今回、4月27日より行われている「テマヒマ展〈東北の食と住〉」は21_21 DESIGN SIGHTのディレクターを務めるグラフィックデザイナーの佐藤卓さんとプロダクトデザイナーの深澤直人さんの視点から、東北の「食」と「住」にフォーカスしたものです。


本展では「テマヒマ」をキーワードにしており、まさに労力(手間=テマ)と時間(暇=ヒマ)をかけて生み出す東北のものづくりへの姿勢を、映像と実物を展示して紹介しています。このテマヒマは東北で生活する者について回る長い冬という時間と、その中で素材を工夫して生み出す知恵と労力にあります。とりわけ食については、凶作とそれにともなう飢饉に見舞われていた東北では、備蓄や救荒食物*への知恵が備わってきました。かの米沢藩の名君、上杉鷹山は食用にできる草木や果実の特徴とその調理法を示した「かてもの」を編纂させるなど、庶民だけでなく東北に暮らすものにとって、テマヒマをかけるのは共通の認識であったと思います。

※救荒食物(きゅうこうしょくもつ):
飢饉や災害に備えて主食に変えて利用された食物や、備蓄できるように加工された代用食物。雑穀や葉や根、実、海藻などが用いられたが、とりわけ東北では寒さを利用してフリーズドライにしたものが多くみられる。


「テマヒマ展」は六本木・東京ミッドタウンの21_21 DESIGN SIGHTで8月26日まで開催中です
地下ロビーには本展で紹介されている食や住に関連した品々と生産地が表示された東北6県の地図が

会場では佐藤卓さんのグラフィックと深澤直人さんの空間構成、フードディレクターの奥村文絵さん、ジャーナリストの川上典李子さんらによって集められた東北の「食と住」にまつわる55種の品々を、トム・ヴィンセントさん、山中有さんによる撮りおろしの映像、西部裕介さんによる写真とともに紹介しています。

会場構成は映像で東北の食文化、住文化を紹介するギャラリー1と東北のものづくりの完成品、プロセス、材料や道具などの実物と写真を展示するギャラリー2で構成されています。とりわけ数々の実物が並べられたギャラリー2は、仙台出身の僕にとって、なにもかもが懐かしく親しみ深いものばかりで、ひととき時空を超えてこども時代に食べたり触ったりした故郷の品々に触れた思いをしました。

映像は7つのショートフィルムになっており、りんご箱を製作する作業場、きりたんぽを作る厨房、りんご剪定鋏を作る工房の様子などを捉えており、映像に合わせた音楽がより新鮮な映像作品になっていました。とりわけ、りんご箱の製作では、もとより小気味いい釘打ちのリズムに合わせて、ブラスハープの演奏が加わっており、僕の知るりんご箱製造の現場(製造現場に行った事はありませんが、学生時代に視聴覚教材で見た記憶があります)が、とてもスタイリッシュに見えました。まずここで7つの映像を見る事で、ギャラリー2にある実物展示がより興味深く見る事ができると思います。


ギャラリー1では東北の食文化、住文化を映像的視点からとらえた
7つのショートフィルム「『テマヒマ展 〈東北の食と住〉』のための映像」
写真は「りんご剪定鋏(青森県弘前市)」
東北の生産地に赴き捉えた写真の数々が展示されています。写真は「干し柿」
会場には展示されている品々をモチーフにしたバナーが

ギャラリー2の実物展示では、救荒食物と言われる保存食や地域に根ざした食品、東北の生活に不可欠な道具やそれらの道具から生み出された工芸品などが多く、いずれも種類多く並べられており、よくこれだけ集めたものだと正直驚きました。仙台出身とは言っても、やはり仙台は都会ですので、こうした素朴な食べ物や道具には僕の年代(1960〜1980年代を仙台で過ごしました)でもほとんど触れる事はありませんでしたが、「油麩」を切ったものが味噌汁に入っていたり、岩出山の「凍み豆腐」が煮物に入っているのはごく当たり前でした。ようやく生産者を見つけたという幻の「凍みイモ」はこどもの頃、粉にして餅のように食べさせられた記憶があります。実はいずれも育ち盛りだった時分の僕にとっては、あまりよい思い出ではないのですが…;;

いわなを焼いて乾燥させた久慈産の「綱干しいわな」
そうした僕ですら新鮮な驚きを持って見られる展示ですので、東北の独自の文化に触れた事のない方には大変珍しいものに写るのではないでしょうか? 東北を知るものにとっては懐かしさと親しみを、はじめて触れる方には驚きをもたらす展覧会ではないかと思います。また、こうした東北の知恵はこれまで通りの生活を見直す必要のあるこれからの日本(日本だけではないと思いますが)に暮らす人々にとって、なにかしら役立つ事は間違いないと思います。


岩手県南部地方に伝わる幻の救荒食物のひとつ「凍みイモ」
粉にして湯で練って砂糖をまぶしてイモ餅はかなり小さな頃に食べた記憶があります
フランスパンのような長い麩は宮城県登米市の「油麩」
仙台でのこども時代にはこの油麩を切ったものが味噌汁の具に入ってました
駄菓子も実にたくさん展示されています
上は種類の多さは日本一の「仙台駄菓子」、下は諸越製の「きつね面」が珍しい「鶴岡駄菓子」
どっしりとした重厚なつくりの天童の「柏戸イス」
山形県出身の関取、柏戸関の横綱昇進記念に贈呈されたのが名前の由来
雪上作業用靴として天然生ゴムで手作りされた「ボッコ靴」
写真はかんじき装着用のリボンがついた短長タイプ
テマヒマをかけるには職人の手が大事ですね
青森県弘前市の「りんご剪定鋏」の製作工程。剪定によってその年のりんごの味が決まるそうです
中庭には青森の「りんご箱」が高く積み上げられていますn
本展ディレクターのひとり。グラフィックデザイナーの佐藤卓さん

本展の共同企画として東京ミッドタウンのとらやにおいて、東北産の原材料を用いて開発した新菓子とその開発の様子を収めた映像による「とらや×テマヒマ展」を同店店内のギャラリーにおいて開催しています。

今回、開発したのは、秋田県石孫本店の「寒仕込み 雪見蔵」の味噌に寒天を加えて固め、御前餡と岩手県産黒米を使った餅で包んだ『味噌黒米餅』、ずんだの原料である山形県産の裏漉しした「だだ茶豆」の枝豆に琥珀羹を加え、煉羊羹と重ねた『ずんだ羹』。いずれも各1個420円(税込)で同店で販売しています。

なお、販売期間はいずれも8月26日までですが、『ずんだ羹』は7月4日からの販売となります。本展会期中にとらや東京ミッドタウン店にて生菓子を購入すると本展入場料が200円割引(2名まで)に、また、入場券半券をとらや東京ミッドタウン店での会計時(1,500円以上)に提示するととらやオリジナルグッズがもらえます。


『味噌黒米餅』。表面を少し焼くことで、香ばしさが引き立たっています

[展覧会情報]
会期  :2012年4月27日(金)〜8月26日(日)
休館日 :毎週火曜日
開館時間:11:00〜20:00(入場は19:30まで)
会場  :21_21 DESIGN SIGHT(東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内)
入場料 :一般1,000円、大学生800円、中高生500円、小学生以下無料

交通アクセス:
都営大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木」駅、千代田線「乃木坂」駅より徒歩5分

主催  :21_21 DESIGN SIGHT、公益財団法人 三宅一生デザイン文化財団
後援  :文化庁、経済産業省、
青森県、秋田県、岩手県、山形県、宮城県、福島県、東京都、港区
特別協賛:三井不動産株式会社
特別協力:株式会社 虎屋、株式会社 TOSEI
協力  :キヤノンマーケティングジャパン株式会社、マックスレイ株式会社
お問い合わせ:03-3475-2121

とらやの商品に関するお問い合せ:とらや東京ミッドタウン店 03-5413-3541