2016年10月26日

『この世界の片隅に』で幸せであることの意味を噛みしめる



東京国際映画祭第1日目は、レッドカーペット取材もそこそこに待ち望んでいた、片渕須直監督、こうの史代原作による「この世界の片隅に」を見てきた。


広島の海苔を養殖する家に生まれ、毎日を家族に囲まれて、好きな絵を描いて、ボーっと少女時代を過ごしてきた浦野すず(のん)。18の歳にどこかで見初めてくれた、顔も知らない人・北条周作(細谷佳正)のところに嫁に行く。嫁ぎ先は戦艦「大和」の母港・呉。足の不自由な義母にかわって、すずなりに家事をこなすが、出戻ってきた義姉・黒村径子(尾身美詞)に使えないと言われる。それでも、径子の娘・晴美(稲葉菜月)と仲良くなり、優しく接してくれる新しい家族の中で徐々に自分の居場所となっていく。しかし、次第に戦況は悪化し、道に迷い遊郭で遊女の白木リン(岩井七世)と出会ったり、重巡洋艦「青葉」の水兵となっていた幼馴染の水原哲(小野大輔)との別れがあり、空襲に怯える毎日がやってくる。それでも、毎日の暮らしは続く


片渕須直監督は「マイマイ新子と千年の魔法」で第14回文化庁メディア芸術祭で優秀賞を受賞。「魔女の宅急便」では当初は監督として関わり宮崎監督復帰後は演出補として活躍するなど、知る人ぞ知る名演出家。原作のこうの史代は「夕凪の街 桜の国」(双葉社)で第8回文化庁メディア芸術祭でマンガ部門大賞を、第9回手塚治虫文化賞新生賞を受賞。田中麗奈主演で実写映画化された。まさに最強のタッグ。


“すずさん”の世界に息を吹き込んだのは、すずさんを演じる女優・のん(旧名:能年玲奈)。やさしく、やわらかで、ほんわかとした彼女の声以外に考えられないほどの適役ぶりだ。主題歌はフォーク・クルセイダーズの名曲「悲しくてやりきれない」をコトリンゴがやさしく歌い上げ、映画を忘れられないものにしている。


「この世界の片隅」は1112日(土)より全国で公開。


ここからネタバレありです。


戦時中も僕らと同じような暮らしがあった、という当たり前のことに気づかされる。笑いがあり、ケンカもあり、もちろん愛もあった。当たり前の人としての暮らしがあった。


嫁いでも日々をボーッと過ごしてきたすずだったが。


絵を描くのが大好きだった右手とともに、いつもすずちゃんと慕ってくれた姪の晴美を目の前で奪われ、いつも厳しかった兄と淡い恋心のあった幼馴染みの哲を戦争に奪われ、広島の母と父も原爆に奪われ、仲良しの妹は原爆病に侵された。ボーッとしていたすずが終戦の日に「何も知らないボーッとしたまま死にたかった」と怒りとともに叫び泣く。


それでも妹を見舞った広島で戦災孤児となった少女を連れて帰り、シラミだらけのその子を新しい家族として迎える。そこには新しい家族として、これからもいつもの暮らしを続けようとする笑いがあった。それでも生きて行くのだという、人として当たり前の笑いがあった。


途中、顔がクシャクシャになっただろうほど、号泣しながら見ていたが、終わった時にはなにかすっきりした感情に包まれ、明日も頑張ろう、という気持ちになれた。どんな時代も人としての日々を暮らしていかなければならないという当たり前のことに強く心を打たれた。


そんな気持ちで劇場を出てきたのだが、街を歩いていると、楽しげになにかしゃべりあっている家族や、大笑いをしながら腕を組んでいる二人連れを見たら、もうなにかわけもわからない感情が込み上げてきて、気づいたら滂沱の涙を流していた。


日々、辛いこと、悔しいこと、怒りたいこと、何もかも投げ出したくなること、たくさんの嫌なことがあるけど、僕たちはなんて幸せなんだろう。60年前の僕たちの祖父や祖母、父や母。そして世界のどこかで、戦禍に見舞われてそれでも日々の暮らしを送っている人たちは数かぎりないほどいる。


いまも「この世界の片隅に」同じような苦しみにあっている人たちがいる。僕たちはそのことを忘れてはいけない。悲しみを背負った過去を持つ国だからこそ忘れちゃいけない。


全編を通じて、笑ったり、泣いたり、憤ったり、飽きのこない構成、ストーリー。キャラクターも素晴らしい、声優もぴったりハマっている。アニメはちょっとという人にも自信を持って勧めたい、今年大ヒットしている邦画やアニメよりも、見る価値のある素晴らしい作品です。


2016年9月9日

AirPodsもいいけど、純正のワイヤレスレシーバーを!

「チンアナゴだ」とか、「死ぬほどダサい」とか、「絶対どっちかなくす」とか、「クソ高い!」とか、さんざんな言われようのアップルの新製品『AirPods』(16,800円)ですが、この耳かけタイプでもない、ループストラップでもない、2つにわけてそれぞれの耳に引っ掛ける、という大胆な、というかアホなスタイルを、堂々と天下のアップルが出しててきたのがすごいと思うんですよね。





おかげでiPhone 7だけでは物足りなさ満載だった、今回の発表に大いに花を添えたのは間違いない、飛び
道具的な存在だったと言えます。

ただ、このイヤフォンジャックを廃してライトニングからのサウンドアウトって施策をフォローするのに、賛否両論のAirPodsと超絶ダサい変換アダプタってのは、あまりにユーザのことを考えていなさすぎやしませんか?

忘れているのは、いま使っているイヤホンをワイヤレスで使えるようにするデバイスを用意しなかったってことです。そんなん、サードパーティでいくらでも出てるでしょ、って指摘されちゃいそうですが、それだと、結局、クソダサい、サードパーティのブルートゥースレシーバーを胸ポケットに括りつけたりしなけりゃいけなかったり、するんですよ。

そこで、アップル純正のワイヤレスレシーバーがあって、自前のイヤホンやヘッドホンを挿すことができたらいいのに。既存の技術だけど、アップルがまとめるとこうも洗練された使い方ができるのかって、いうレシーバーがでてきたらいいのに。

http://www.apple.com/jp/airpods/

2016年9月8日

iPhone 7 Plusのデュアルカメラに注目



iPhone 7、iPhone 7 Plus、AirPods、AppleWatch Series2、いろいろ出ましたね。ほぼ予想とか噂通りなのは、このところのアップルの発表イベントの規定どおりなかんじで、まぁ、こんなもんか、というところですね。

それにしても驚くのがアップルのイベントに出てくるコンテンツがポケモンにマリオって。なんのイベントなの?ってな。宮本さんが出てきた時にウェルカムぶりにはちょっと感動すらしました。それにしても、これを「日本スゲェ」とか思って見てる奴はアホ。どんだけ海外にいいコンテンツ持っていかれてんだよって話なわけで。ちなみに任天堂からはラン&ジャンプゲームの『スーパーマリオ・ラン」が12月にはリリースされるみたい。また、この他に「どうぶつの森」と「ファイアーエムブレム」シリーズからも2017年3月末までには提供されるようです。




iPhoneについては、カラーに本当に黒いの(JetBlack)が出てきて、うれしい限りです。価格はiPhone 7が72,800円(32GB)〜、iPhone 7 Plusが85,800円(32GB)〜てな感じ。9月9日から予約開始、16日販売開始です。

それとやっぱりiPhone 7Plusのデュアルカメラの光学ズームはどんなもんか試してみたい。スマートフォンのカメラ性能の高さはそろそろデジイチに退場を促すほどになってきているとは思うけど、やっぱりなんだかんだ言ってもレンズについては敵わない部分だと思うので、こうした二段構えのレンズ構成に出てきたのは興味深いなぁ、と。


個人的にはオーディオまわりで、おおっ、と思うものがいくつかあって、ちょっとうれしい感じもありました。特にステレオスピーカーが◎。PlusとかiPadとか、横置きにすれば、ひとりで映画見たりするのに、これ以上ないデバイスだと思うんだけど、スピーカー位置が本体底面のライトニングの両脇にあるので、横置きにしてもステレオにはならないわけで、ま、仕方なくイヤホンで聞いていたわけですが、今度はディスプレイの両脇から音が出てくる仕様らしいので、これはよかった。ライトニング直挿しのイヤホンも、どの程度の音質向上が期待できるのか聞いてみたいです。これでハイレゾをきちんと対応してくれればなんの問題もないのだけど。



そうそう、FeliCa対応は笑った。いったい何年前の話題をほじくり返して復活させたんだろう? まさに、いまっ? って感じ。まぁ、あれば便利っちゃ、便利なんだろうけど。10月にはSuicaが対応するようです。

ワイヤレスイヤホンの「AirPods」は画期的ながら、このデザインは絶対どっちかなくしそうですね、デザイン的には既存のアップル製品のイヤホンを踏襲していていまいちなんだけど、おなじ仕様でサードパーティからよさ気なイヤホンが出てくるのを期待したいです。女子向けのアクセサリー的なイヤホンが出てきそう。



価格はこんな感じです。

iPhone 7 32GB 72,800円(税別)
iPhone 7 128GB 83,800円(税別)
iPhone 7 256GB 94,800円(税別)

iPhone 7 Plus 32GB 85,800円(税別)
iPhone 7 Plus 128GB 96,800円(税別)
iPhone 7 Plus 256GB 107,800円(税別)

AirPods 16,800円(税別)10月下旬発売

2016年8月8日

これぞ本当のゴジラだ!いまこそ本腰を入れて観たい「ゴジラ」(1954)


『シン・ゴジラ』を傑作と思った人はぜひ1954年の原点に触れてほしい。これを古くさいとか、現代社会とは違うと思わずに見てほしい。これが本当の「ゴジラ」だ!

「ゴジラ」と「シン・ゴジラ」で明らかに共通する点が、ゴジラを徹底的に恐怖の対象として描いていることにあります。

「ゴジラ」では、ゴジラが東京にやってきて海に帰っていくルートを空襲で飛来してきたB29爆撃機ルートになぞらえたり、広島や長崎、福竜丸による被爆がゴジラの体表や造形で表現されるなど、ゴジラを戦争のメタファーとして描いています。「シン・ゴジラ」ではあきらかに福島原発事故の被爆体験から、ゴジラを暴走する原発そのもの、まさに動く原発として描いています。「ゴジラ」(1954)以後のゴジラシリーズでは一貫して、ゴジラ=原爆もしくは原発として描き続けられています。なにも「シン・ゴジラ」ではじまったことではないのです。

そして、「ゴジラ」と「シン・ゴジラ」の決定的に異なる視点が、ゴジラを生物(1954年当時は動物と言った方が近いか)として、見ている視点です。

映画の中では、ゴジラを人類や人類の営みを蹂躙する、恐怖、脅威の存在として捉えるのを大勢としながらも、山根博士をはじめ一部の人々はゴジラを生物として捉えています。

この視点は一見すると、科学者としての視点として見逃されがちですが、ゴジラが生物であり、その “いきもの” を人の一方的なエゴによって葬り去ることへの疑問だけではなく、映画の終盤では、海の藻屑と消えていくゴジラへの哀れみの感情が包み込み、戦争が引き起こす悲しみ、それ以上に命を弄ぶことへの怒りがないまぜになって、観客にどうしようもない涙を誘います。

そしてもう一点。自身の革命的な発明(オキシジェンデストロイヤー)をゴジラとともにこの世から消し去るために命を捧げる芹沢博士を通じて描かれる、科学技術を狂信することへの警鐘があることにあります。

この生命への姿勢、科学技術への姿勢が、残念ながら「シン・ゴジラ」では描ききれていないと思うのです。

2016年8月3日

メーヴェが大空を舞った!「できるはずない」をやってのけた『オープンスカイ』の軌跡


メディアアーティストの八谷和彦さんが長年、続けているプロジェクト「オープンスカイ」。いわゆるメーヴェを現実のものとして、大空を翔けるプロジェクトです。メーヴェという名前は知らなくとも、『風の谷のナウシカ』でナウシカが操る一人乗りのグライダーといえば、知らない方はいないでしょう。


このプロジェクトのひとつのゴールとも言える、ジェットエンジンを搭載した実機での公開フライトが、2016年7月31日に北海道滝川市のたきかわスカイパークで行われました。10年以上にわたって進められてきたプロジェクトで、途中休止期間があったり、エンジンの調達が難しくなったり、紆余曲折を経て、満を持してのフライトだっただけに、僕も北海道まで行って、その勇姿をこの目でみたかったです。


僕が八谷さんのこの「オープンスカイ」にはじめてふれたのは、2003年の利根川河川敷での[1/2モデル]のラジコン機の飛行でした。当時はなんだかひさびさにアートに触れたくなっていた時期で、たまたまこの実験飛行のことを知って、うちからチャリで行ったものの(利根川はうちから車で10分ほど)、すでに実験は終わっていました。


それから数年経って、初の実物大の滑空機である[M-01]が製作され「愛・地球博」で展示されましたが、これにも残念ながら行けず、その翌年2006年にICCで開催された「オープンスカイ2.0」でようやく実機(?)に触れることができました。この時は取材でもなんでもなく、普通に展覧会を見に行ったのですが、なぜか写真を撮っていました。


こんな感じで実際に乗った気分が味わえました。「オープンスカイ2.0」(2006年/ICC)


その後、二機目の滑空機として製作された[M-02]は実際にパイロットである八谷さんが搭乗して、飛行する実験が行われました。この時はまだ動力は搭載せず、ゴム索発航(人が引っ張って、ゴムパッチン方式で飛ばします)で飛ばしていました。


2008年に行われた「金沢アートプラットフォーム2008」において、「オープンスカイ」展示が行われ、金沢市内の公園でテストフライトが行われました。この時、取材に行っていた僕も、引っ張り要員に加えていただき、実際に飛び上がって、着地するのを目の前で見ることができました。

離陸から着地まで撮影。「金沢アートプラットフォーム2008」(2008年)

フライトを終えた八谷さん。「金沢アートプラットフォーム2008」(2008年)


その後、実際にジェットエンジンを積んで空飛ぶ姿を心待ちにしていましたが、2010年にエンジンを搭載した[M-02J]の滑走試験の際にエンジントラブルの発生があり、約2年のプロジェクト休止を余儀なくされました。その後、機体改造、エンジン換装が行われ、2012年に野田スポーツ公園での滑走実験が行われ、2013年にはついに国土交通省航空局から試験飛行許可がおり、ジャンプ飛行が行われました。


いよいよジェットエンジンでの飛行を目前に、2013年にはアーツ千代田3331で「OPENSKY 3.0」が行われ、[M-02J]をはじめ、プロジェクトで製作されたすべての実験機やフライトシュミレータなどが展示されました。レッドブル・エアレースで知られるエアロバティックを知ったのは、この時でした。


M-02Jを前に熱心に説明する八谷さん。「OPENSKY 3.0」(2013年/アーツ千代田3331)

ジェットエンジンを搭載したM-02J。「OPENSKY 3.0」(2013年/アーツ千代田3331)
ジェットエンジンがおさまってます。「OPENSKY 3.0」(2013年/アーツ千代田3331)
忘れがちなのですが、アートプロジェクトなので、パイロットのユニフォームやヘルメットを含め、
トータルでデザインされています。「OPENSKY 3.0」(2013年/アーツ千代田3331)

その後のテストフライトは北海道滝川市のたきかわスカイパークで継続されており、気軽に取材に行けなくなりましたが、2014年の公開試験飛行、そして今回の公開飛行などに常に注目しておりました。

今回の公開飛行成功の知らせをうけ、十年以上に渡る八谷さんの偉業を讃えたいと思います。八谷さん、おめでとう!



これはおまけ。

OpenSky
http://www.petworks.co.jp/~hachiya/works/OpenSky.html

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2016年8月2日

『シン・ゴジラ』は本当に傑作か!?



『シン・ゴジラ』、昨日2回目を見てきました。1回目は初日の深夜見てきました。一回だけだと、いろいろブレるだろうから、もう一度見て、よく噛み砕いてから、なにか書こうと思いました。

モロ庵野だとか、未確認生物だとか(オオタチ・ベビーか)、第一次防衛ラインだとか、血液が沸騰してるだとか、鉄オタが黙ってないとか、ダン・ダン・ダン・ダンダ・ダンダンだとか……。いろいろツッコミたいところはたっぷりあって、特筆すべき点や褒めたいところなど、いろいろ書きたいことがありました。


それでも、結論として、やっぱり僕には受け入れられません。


先に関係者試写で見た著名な業界関係者の方が、「すごい、すごいけど、賛否両論の論争になる」とおっしゃっていたのですが、なぜかいま周囲のみなさんの意見は、「すごい」、「傑作」、「ぜったい見た方がいい」、「見るべき●●の理由」、とか。みんな、褒めすぎ。いつも信頼にたる分析をしてくれるブロガーの方までも絶賛。


なぜストレートな批判がないのか。僕は1回見て、業界関係者の方が、賛否両論になる、とおっしゃったのが、よく理解できました。ところが初日、2日目、3日目になっても目立った批判が出てこない。なぜなんだろうと思って、考えてみました。


それで気づいたのが、書いている人のほとんどが、「ゴジラ」を知らないのだということ。いや、なにもゴジラという怪獣キャラクターを知らないと言っているのではなく、昭和29年『ゴジラ』から『ゴジラ FINAL WARS』までのゴジラをほとんど知らないのです。もう一つ言うなら、庵野秀明監督の作品も「エヴァンゲリオン」ぐらいしか知らない、樋口真嗣監督が特技監督を担当した「平成ガメラ」シリーズも知らないんじゃないかと。


残念ながら、僕も昭和29年には生まれていませんが、そのわずか10年ちょっと後、映画館の映写室の窓から、リバイバルの『ゴジラ』を見ました(父は映画館の看板描きだったので、よく映写室には忍び込んでました)。その時の恐怖たるや、マジでちびったのを覚えています。連れて行ってくれた母は、空襲を思い出すから見たくない、と言って終わるまでロビーで待っていました。


昭和40年頃の幼稚園に行ったかという頃の子どもの僕が見た、当時の『ゴジラ』の恐怖は、今回、『シン・ゴジラ』で見せられた恐怖なんか足元にも及ばない恐怖でした。まして、CGや特撮技術を知ってしまった(知りすぎてしまった)いまの僕には似非の恐怖にしか思えません。


それでもゴジラならびに怪獣映画を、ギャレス・エドワーズ版『GODZILLA』あたりから興味を持って、BDなんかで妙にきれいになったゴジラ映画の映像を見て、怪獣映画を知ったと思い違いをしているゴジラ初心者には、『シン・ゴジラ』体験が昭和29年の『ゴジラ』とイコールだと思ってしまうのは仕方のないことだと思います。


もちろん、単なる映画としてはそれで十分なのでしょう。フツーの映画なら、傑作だと思うし、よくやったアッパレと言いたいのですが、これはゴジラなんです。


今回の『シン・ゴジラ』のメインスタッフである、庵野秀明さんも樋口真嗣さんもほぼ同年代(庵野さんは60年、僕は62年、樋口さんは65年だったかな?)で、彼らももちろん子どものころにゴジラに取り憑かれた人たち。彼らは彼らの映画人生を、この映画に、『シン・ゴジラ』に、全部ぶっこんできたんだと思います。そこは素晴らしい、絶賛に値します。


しかし、僕としても、映画を見る側として同じだけの人生をゴジラにぶっこんできた側としては、こんなんじゃ、満足できない。庵野さん、樋口さん、昭和29年の『ゴジラ』を追体験させるだけで、満足したんですか? 原発をゴジラに置き換えれば、すべての人がリアルな恐怖を感じてくれると思ったんですか?


あなたたち、まだまだやれるでしょう。自分たちが過去創り出してきたコンテンツのエッセンスを形を変えて出すなんて、小手先のエンターテインメントに、僕は騙されませんよ。ましてや、日本の宝であるゴジラでそれをやってしまうなんて。もっと、世界が驚くオリジナルのゴジラを生み出してみてくださいよ。


次回作に期待します。おなじスタッフで、こんどこそ、これぞゴジラってのを見せてください。本当にがっかりさせないでくださいよ。


ひとつだけ、細かいことを。最後のシッポのアップ。あれだけはやめてほしかった。


http://shin-godzilla.jp

2016年7月19日

裸足が最高。この夏、イチオシのアートな冒険へ! DMM.プラネッツ Art by teamLabレポート



裸足なのがいいんです。なんか、いろんな意味で吹っ切れる。アートだ、って構えていた、どこか偉そうにしてた自分をぶっ壊してくれて、一緒に行った人ともなぜか何十センチも距離が近くなったような気がしたり。それどころか、たまたま会場で居合わせた人とも仲良くなれたような。

そんな体験ができるのが、お台場で開催中の『DMM.プラネット Art by teamLab』です。チームラボといえば、いまや押しも押されもしない、メディア・アート/デジタル・アートを得意とする制作集団。一昨年〜昨年、日本科学未来館で行われた企画展「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」では100万人を超える動員を実現したのは記憶に新しいところです。

そのチームラボのデジタルアート作品が、約3,000㎡もの展示空間内に展開され、その迷路のように構成された作品を歩き回りながら鑑賞、いや、体験、いやいや、ここまでくると冒険するわけです。まさに「アートの冒険」なんです。



ここからアートの冒険がはじまります!


会場に入るとまず最初にやらなければならないのが、靴を脱いで、靴下も脱ぐことです。そんなアート、いままで体験したことありますか? 靴を脱ぐところまでは結構、ありましたが、さすがに靴下もとは…ねぇ。この初っ端で靴下を脱がされるのは、まさにこちらの先入観を思いっきり取っ払ってくれて、それがそのまま、これからなにがおこるんだろう?という期待感へと変換されます。

荷物をロッカーにしまい、渡された防水パッケージにスマホをしまい、パンツの人は膝辺りまで裾を捲り上げます。女性はスカートだから、まくりあげなくていい、と安心してはいけません。理由は後でわかりますが、ぜひショートパンツで来てくださいね。


荷物はロッカーへ。特に濡れちゃ困るものはぜひしまっていきましょう。

最初に足首までのプール。言ってみれば昔あったプールの消毒槽みたいなもの?

「やわらかいブラックホール」。これも作品なのです。

さて、なんか身ぐるみ剥がされたような状態で、最初の暗い通路に入るといきなり、足首まで浸かる冷たい水の洗礼が待っています。次に待っているのが、最初の作品「やわらかいブラックホール」です。これはもう説明不要、行って体験してもらった方がいいです。ただし、極端に体力に自身のない方は要注意です。僕は…なんとか脱出できました。

さらに暗い通路を、妙にフニャフニャする床にいつもと違った感触を足の裏に感じながら行くと、昨年、銀座のPOLA MUSEUM ANNEXで公開されたクリスタルユニバースの最新バージョン「Wander through the Crystal Universe」が待っています。

LEDの光の点で描くデジタル点描が、銀座とは広さも高さも、数倍の規模で展開されており、さらに床はピカピカに磨き上げられた鏡面になっており、上下の感覚も奪われながら、まさに光の迷路の中を浮遊しているかのような体験ができます。スマホでクリスタルユニバースを構成するエレメントを選び、出現させる、インタラクションで作品をともに創りだすことができます。


「Wander through the Crystal Universe」遠近感も上下も、なにもかもわけがわからなくなります。

「Wander through the Crystal Universe」

「Wander through the Crystal Universe」

さらに暗い通路を迷いながら進むと、また冷たい水の通路に行きあたります。そのまま進んでいくと、今度は徐々に深さを増していき、ふくらはぎぐらいまで水がきたところまで来ると、目の前に色とりどりの鯉が泳ぐ、水で満たされた広い空間で出ます。水面に投影された鯉は足に当たると、パッと花びらへと変化し、水面に広がります。インタラクティブドローイングの「Infinity」です。

その光景はまさにモネの「睡蓮」のようです。床面に投影された映像が人の動きに合わせて変化するインタラクティブ・アートはチームラボに関わらず、よく見られる手法ですが、これを水面で行ってしまうという発想が度肝を抜きました。そして、楽しい、飽きない。いつまでも、この光の池の中にいたいような、そんな気持ちにさせられます。


「Infinity」なぜか女子はみなさんこうして足にプロジェクションを投影したがります。

「Infinity」

この作品を見つけられたらラッキーです。






後ろ髪を引かれる思いで最後の作品に向かいます。また暗い通路を進み辿り着いた空間が、プラネタリウムのようなドーム型の空間に花々が時々刻々と咲き乱れて消えていく作品「Floating in the Falling Universe of Flowers」です。この空間は、床面が鏡面となっており、咲いては枯れ、また咲き乱れる、花の宇宙に放り込まれたような、不思議な浮遊感覚にとらわれます。床に置かれたビーズソファで寝転ぶと、もう起き上がれません。花の宇宙に身を委ね、時の過ぎるのも忘れてしまいます。


「Floating in the Falling Universe of Flowers」
まさに花の宇宙です。

「Floating in the Falling Universe of Flowers」


書いていて思うのですが、実際の体験にはどんなに書いても追いつかない。来て、体験してもらわないと、この良さはわかりません。これまでチームラボの作品を数多く見ている方も、チームラボでしょ、と思ってはいけません。まさに僕がそうだったのですが、とにかく百聞は一見にしかず。

この夏、美術館でも企画展でも素晴らしい展示はいっぱいあって、ぜひそちらにも足を運んでいただきたいのですが、お子さん連れ、彼氏彼女との距離を縮めたい、という方はぜひ行ってみてください。ヒトナツの思い出になること、請け負います。ちょーオススメです。


【開催概要】
DMM.プラネッツ Art by teamLab

会期:2016年7月16日(土)〜8月31日(水)
会場:お台場・青海周辺エリア(「お台場みんなの夢大陸2016」会場内)
時間:10:00〜18:00(7月16日〜7月28日)
   10:00〜22:00(7月29日〜8月31日)
※開催時間は変更になる場合があります

料金:1DAYパスポート 一般2,000円/小中学生1,300円
   プライオリティチケット 一般1,500円/小中学生700円
   ※混雑を気にせず、優先的に入場できます。

お台場みんなの夢大陸オフィシャルサイト
http://www.odaiba.com