2020年5月6日

40年前、相米慎二という日本映画史に残る映画監督がいた

『セーラー服と機関銃』(amazon prime)

NHK BSプレミアムで5月5日に放送された映画『セーラー服と機関銃(1981年)を見ちゃいました。

相米慎二監督はやっぱりいいですね。ご存命だったら(53歳という若さで没)まだ70歳ちょっとぐらい。まだまだいい作品を見せてくださっただろうと。


「セーラー服と機関銃」を公開時にリアルタイムで見てからは、もう何度見たかわかりませんが、こうしてひさびさに見ると、いろいろと発見や思い出すことがあるものです。

当時、すでに数本の映画出演経験があり、相米監督とも二回目だった薬師丸さんでしたが、とは言っても17歳の女子高生にやらせる内容じゃないよな、という演出が随所にあって、いろんな意味ですごい。クレーンで吊り下げられたり、とかね。

すごいと言えば、「カ・イ・カ・ン」のセリフで知られる、泉が機関銃をぶっ放すシーン。薬師丸さんの左の頬に破裂した破片があたって本当に流血してしまったのはよく知られた話です。実はこの時、破片が飛んでこない範囲を確保していた安全ラインを、薬師丸さんが超えてしまったことに、当時、助監督を務めていた黒沢清さんが気づいたのですが、このままOKテイクになると思って、あえて止めなかったのだそうです。後年、「(止めなかったことを)後悔していた」と話していました。

いまなら考えられない、まさに映画時代の奇跡のシーンですね。ちなみに上記のポスター/チラシの写真はスチル用に後から撮られたもので、頬の流血はメイクで再現されたものだそうです。

やはりこのころはコンプライアンスなんて言葉もなくて、現場至上主義で作品作りがなされていたんでしょうね。そうした現場を作り上げた相米監督はもちろんすごいのだけれど、それを若干17歳でこなしていた薬師丸さんもすごいな、と。


『台風クラブ』amazon

相米慎二監督は「セーラー服と機関銃」も、デビュー作の「翔んだカップル」も好きですが、個人的な一番は『台風クラブ』(1985年)です。台風が来ると変なテンションになるって、誰もがわかると思いますが、この作品はそのテンションが台風の接近と、思春期の不安定な状況も相まって、なにかが狂ってしまった中学生たちの出来事です。そこで起こる彼らのちょっと異常とも思える行動や衝撃のエンディングも含め、深く心に刻まれた作品です。

とまじめに書けばそういうことなんですが、本当の事を言うと、自分の厨房の頃の記憶を引きずり出されてしまって、グサグサと心に刺さるのが嫌なんです。そういう映画です。80年代に映画にハマっていた人で、「台風クラブ」に影響を受けたという人は少なからずいるのではないでしょうか? 「サマーウォーズ」の細田守監督もどこかで「台風クラブ」に影響を受けたと言及されていたと思います

キャストはもちろん工藤夕貴さんはよかったですが、この作品でもっとも気になったのがその後に「スケバン刑事」でブレイクする大西結花さんでした。彼女も薬師丸さん同様に、厳しい相米監督の演出の餌食…いやいや、演技指導によく耐えたもんだと。


『ラブホテル』(amazon prime

ところで、相米作品の別格として一番のその上があります。『ラブホテル』(1985年/脚本:石井隆)です。にっかつロマンポルノの作品なのですが、とにかく名作です。人生に疲れた中年男・村木(寺田農)とラブホテルで出会ったデリヘリ嬢の名美(速水典子)、村木の妻・良子(志水季里子)の恋愛模様を描いた、心から切なくなる大人のラブストーリーです。

作中で使われているもんた&ブラザースの「赤いアンブレラ」も効果的なのですが、特にいいのがエンドタイトルで流れる山口百恵さんの「夜へ…」。年に一回ぐらいは「ラブホテル」を見て、エンディングで名美と良子がすれ違う階段坂に桜吹雪が舞うシーンに涙します。おすすめ。



あ、ただし、ロマンポルノなのでエグい絡みがあるので、くれぐれもご家族揃っての鑑賞はお控えください(笑)

それにしても、「台風クラブ」と「ラブホテル」って同じ年の公開なんですよね。やっぱりすごい監督だったんだなぁ、と「セーラー服と機関銃」見て、しみじみしちゃいました。

『セーラー服と機関銃』(1981年)
監督:相米慎二
脚本:田中陽造
原作:赤川次郎『セーラー服と機関銃』
製作:角川春樹/多賀英典/伊地智啓(プロデューサー)/山本勉(製作補)
出演:薬師丸ひろ子/渡瀬恒彦
製作会社:角川春樹事務所/キティ・フィルム
配給:東映

『台風クラブ』(1985年)
監督:相米慎二
脚本:加藤祐司
製作:宮坂進
出演:三上祐一/紅林茂/松永敏行/工藤夕貴/大西結花
製作会社:ディレクターズ・カンパニー
配給:東宝/ATG

『ラブホテル』(1985年)
監督:相米慎二
脚本:石井隆
製作:海野義幸
製作総指揮:成田尚哉/進藤貴美男
出演:速水典子/寺田農
製作会社:ディレクターズ・カンパニー
配給:日活

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