2020年6月3日

アート潜む森でウォーキング?:神宮の杜野外彫刻展「天空海闊」

巨木過ぎて距離感がつかめません。こんな森がどこにあるかと言うと。

森の中になにか見えませんか?

青々とした新緑の豊かな森。この森、実は人が作り出した “百年の森” と言われる明治神宮の森です。そうです。これ、東京のど真ん中。代々木と原宿の間に横たわる森なんです。ところで、2枚目の写真の森の中になにか見えませんか? 次の3枚の中にもなにかあると思うのですが。



潜んでますよ

これはわかるかな?

れはわかりませんね。撮った本人も探しちゃいます


アート探しが楽しい「天空海闊」展



明治神宮で3月20日から開催されている「神宮の杜芸術祝祭」の展示のひとつ、『神宮の杜野外彫刻展「天空海闊(てんくうかいかつ)」』の作品が明治神宮の杜で展示されています。実はすでにここに来るのは3回目でして、3月の公開直後に来た時は30分ほどしか時間が取れずにじっくり見ることができず(普通に歩くだけで小一時間かかります)、5月にひさびさに都内にきた時は雨に降られて途中で断念。自粛要請が解除されて、ようやく意図していた写真を撮ることができました。

意図した写真というのは、最初に来た時に作品が森の中に隠れていて、本気でしばらく見つけらなかったのですが、この見つけられない感=森の中に見事に融合している感じをみなさんにも味わってもらいたいな、と思って、撮りたいと思った写真でした。


船井美佐《Paradise/Boundary -SINME-》(2020 / ステンレス)
よく見ると、馬と蝶の形に切り抜かれた
ステンレスミラーに歩いている方の姿が

船井さんの作品。どこにあるかわかりますか?
最初は何度、前を通っても見つけられませんでした

三沢厚彦《Animal 2012-01B》(2012-2019 / ブロンズ、ウレタン塗料)
正面に回ると迫力ありますね

木陰にいる様子は、なんだか密林にいる本物のトラみたいです

名和晃平《White Deer (Meiji Jingu) 》(2020 / ブロンズに塗装)
美しい立ち姿に見惚れます

名和さんのシカ、神宮バージョン
向こうに見えるのは明治神宮ミュージアムです

松山智一《Wheels of Fortune》(2020 / ステンレス)
もう草に埋もれかけています

全体像が見えれば、かなり迫力のある大きな作品なのですが


1作品目が冒頭の二枚目の写真の拡大写真で、最初来た時に見つけられなかった船井美佐さんのステンレスでできたミラーの作品《Paradise/Boundary -SINME-》です。2作品目はまさに森の中に潜むトラ。三沢厚彦さんの《Animal 2012-01B》。3作品目は「リボーンアートフェスティバル」で宮城県石巻に行かれた方はおぼえていらっしゃるかと思いますが、名和晃平さんのシカの神宮バージョン《White Deer (Meiji Jingu) 》です。最後の松山智一さんの《Wheels of Fortune》はすっかり草が伸びてきていて、作品が隠れてしまいそうです。

それにしても、まさに神社の境内に現代美術。普通の感覚からすれば、ミスマッチ。実際に作品を撮影している時に、親子連れらしい女性お二人が、「こんなの自然の中に必要ある?」と言い放ってました。まぁ、そう思うのもごもっとも。これが日本の美術教育の限界かな?と。そもそもここに現代美術の作品が展示されているということは、もちろん勝手に作家さんが設置していったわけもなく、明治神宮側の理解があってのこと。いろいろあっての設置なのでしょうが、まさにそこが「天空海闊」なのでしょうね。

【天空海闊】
[名・形動]大空と海が広々としていること。転じて、度量が大きく、こだわりのないこと。また、そのさま。



人々を癒す人工の森


ところで、この女性お二人も信じてくれないだろうと思いますが、この神宮の森は人によって設計され、計画されて、育てられた森だということです。この明治神宮の森を設計したひとりが日本の「公園の父」と言われる林学者の本多静六です。埼玉郡河原井村(現在の埼玉県久喜市菖蒲町)出身の林学博士・造園家で、東京・日比谷公園、北海道・大沼公園など数々の名公園を手掛けた人です。



北池。ここから北参道に抜ける途中の比較的狭い道で
あきらかに森の中を走っていったものあり。イノシシ?

北参道。本多静六は大隈重信に「やぶはよろしくない」と言われ、
杉林にするように言われたそうですが、土壌にあわないと説得したそうです。
これ全部、杉だったら、都心の花粉症が…

南参道の橋から南池を望む


1912年の明治天皇崩御の後、1915年に神宮建設がはじまりました。建設地となった代々木御料地は、当時は森のない、作物の育ちにくい荒地だったそうです。造営には全国から1万人を超える国民が労働奉仕に自発的に参加したのだそうです。その人工林が百年を経て、これほどの森になったわけです。現在、森の変化は自然淘汰にまかせているということですが、その状態を保つにも多くの人手が関わっている事は想像に難くありません。


至誠館近くの芝生広場。親子連れが何組かくつろいでいました

宝物殿前の広場から新宿のビル群を望む
この写真の中に数名がいるのですが、読書、ヨガ、瞑想…
みなさん、思い思いにくつろいでいました


週末はアートウォーキングに


鑑賞にいらっしゃる方に3回足を運んだものとして、ちょっとアドバイスを。作品の設置位置が代々木口(北門)に近い船井作品から北参道沿いの三沢作品、明治神宮ミュージアムそばの名和作品、松山作品と4作家すべて見るには、代々木から入って、原宿口(南門)に出るのがいいと思います。結構な距離(代々木から原宿ひと駅分+α。だいたい1万歩前後)を歩くので、できればスニーカー、もしくは履きなれた靴でいらっしゃることをおすすめします。



原宿口(南門)。南参道鳥居と新しい原宿駅の改札がこんなに近くに



もちろん、反対に原宿口から代々木口に向かってもいいのですが、原宿口にはカフェもあるし、当然、原宿駅周辺にはお店も多いので、歩き疲れた足をゆっくり休めることができます。代々木側は代々木駅まで5分ほど歩かないとほぼなにもないのでご注意ください。もしくは小田急線参宮橋駅近くの参宮橋口(西門)を利用して、宝物殿前の芝生でゆっくりするのもいいかもしれません。

明治神宮の杜とアート。ミスマッチかもしれませんが、実はどちらも人の手、人の心が生み出した作品ですので、本当はマッチしているのかもしれませんね。密を避けて、ひろびろとした空間で、お散歩がてらにこの週末にぜひ。

神宮の杜芸術祝祭 公式サイト
https://jingu-artfest.jp

MISA FUNAI web(船井美佐)
http://misafunai.com

三沢厚彦 Atsuhiko Misawa - 西村画廊(三沢厚彦)
http://www.nishimura-gallery.com/artists/misawa/misawa3.html

名和晃平 - sandwich(名和晃平)
http://sandwich-cpca.net/art/

TOMOKAZU MATSUYAMA(松山智一)
http://matzu.net

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